25話 妖精王と紫
「そうだ。クロムちゃんに魔導書の情報伝えようと思って。うちの子達が集めた紫の魔導書の情報よ。」
「ありがとう。リリィさん。」
クロムはリリィから丁寧に畳まれた紙をもらう。
その紙を開けて読み始めた。
リリィさんの”うちの子達”というワードに引っかかっていると、それに気づいたのかメグが小さく教えてくれた。
「リリィさんトヤヘリノの妖精王なんだよ。」
「そうなの!?」
大きな声が出そうになったのをグッとこらえて聞くと、
メグがクスクスわ笑って首を縦に振る。
「フォンシーレの地下倉庫か、あそこってまだ入れるんですか?」
「うちの子達が入れたから、完全に閉鎖されているわけでは無いと思うわ。」
「サイモンに開けてもらえるように頼んどくか?」
「いいの!助かるよダイヤ!」
クロムの目がキラキラと輝く。
「ダイヤさん、サイモンって誰ですか?」
「魔法学校の先生の一人だ。ウィルも何度か会ったことあるはずだぞ。」
「でも、サイモンって鍵開けが得意なんでしょ?入口がわからないと開けられないんじゃないかしら?」
「それなら、俺場所大体わかるで。」
「あぁ!そうだ!テオ見つけてたもんな!」
ソレイユとテオが肩を組む。
その勢いにリリィはびっくりしたようだ。
「それいつだよ。」
「一年くらい前かな?リンとヴァイオレットと学校から帰ってるときに、たまたまテオと会って。
その時に見つけたんだよ。」
「せや。俺が脱走したクロムさん追いかけてるときに見つけてん。そん時たまたまダイヤに地下倉庫のこと調べてほしいって言われてたから、すぐ気づいたわ。」
「え、たまたまが重なって僕にも軽く火花が飛んだ…。」
クロムが冷や汗をかいているのを見ると、テオはシシっと笑う。
「じゃあ、明日にでも場所がわかるテオとソルに行ってもらおうかな。」
「クロム様任せとき!」
「それなら、新人二人も連れて行こうかな。仲良くなりたいし!」
「じゃあ、メグと俺も行く。」
ダイヤがそう言うと、メグは嬉しそうだがソレイユは手でバツを作る。
「テオと任務なんてなかなか無いから楽しませてくれよ!」
「お前、サイモンに課題のこと言われても知らねぇぞ。」
「ゔぅ…」
ソレイユはしょんぼりしているようだ。テオがソレイユの背中をさする。
ダイヤはため息を付いて、さっきよりも柔らかく言った。
「サイモンに鍵開けてもらったら俺は帰るから、メグの面倒だけみといてくれ。
三人で入隊したのに部隊が違うから別行動は可哀想だろ。」
「たしかにそうだな。」
ソレイユは納得したようだ。
話がすごい速さで進んでいるが、どうやら俺等三人の初任務が決まったようだ。
「ウィル、メグ頑張ろう!」
俺がそう言うと、メグはニッコリ笑って頷いた。
ウィルはフンッとそっぽを向いてしまった。
紫の魔導書… いったい何の魔導書なのだろうか。




