20話 司令塔
「二人は協力してるつもりなんだろうけど、息が合ってないんだよね。」
「個人競技のスポーツ選手が二人集まったって感じだよな。」
褐色肌の二人は内緒話をするように口元に手を当てて話しているが、俺らに全部聞こえている。
わざと聞こえるように話しているのだろう。
たしかに俺とメグは今会ったばかりで、作戦はあるが二人の息がしっかりと合うのは難しいことだと思う。
そう思っていたのはメグも同じようだ。
メグは唇を噛む。
俺とメグの鬼ごっこが息詰まっているとエルリックが出ていった(退場させられたの方がいいだろうか)ドーム型のガラスの天井の穴から
なにか黒い物体が落ちてきた。
不思議に思い、上を見上げると人のようなものが次々と降ってくる。全員で30人くらいだろうか。
「魔人だ———。」
クロムがそう言うと審査員達は武器をかまえた。
「ニーニャ、テオ。
クロムとアリスについとけ。」
ダイヤがみんなに指示を出し始めた。
ニーニャとテオがクロムと金髪の少女、アリスがいるテントの方へ走っていった。
「ソル、リン。
受験生三人のサポートをしてやれ。うまくやれば成績を上げてやろう。」
「ある意味、実技試験だよね!」
「一緒に進級したいしな!」
褐色肌の少年少女は楽しそうに言った。
「ヴァイオレットはリリィに状況報告してくれ。」
ダイヤはポケットから出した小さな水晶に話しかける。
あの水晶は多分通信機器なのだろう。
拳くらいの大きさで、中に半透明のクリスタルが入っている。
「ニーニャ。俺は城の方見てくるから、指揮は頼んだぞ。」
ニーニャが頷くと、それを確認したかのようにダイヤの着ている白衣の中から箒が出てきた。
ダイヤはそれに乗って城の方へ飛んでいってしまった。
どうやら、鬼ごっこは中断で緊急試験が始まったようだ。
ダイヤが褐色肌の少年少女に”受験者三人のサポート”といっていた。
ということは、この魔人達を倒すのは俺等ということだ。
「ライト、気を引き締めていこう。」
そう言ってメグは手のひらサイズの地球儀のような形の物を取り出した。
中央は土星のような形の石が浮いている。
俺も槍を構えた。




