18話 準備運動
その後も会議は続き、日付が変わる前にお開きとなった。
二次試験当日、俺は緊張で気持ちがいっぱいだった。
俺の他には三人みんな今日のために頑張ってきたのだろう。
試験会場に入ると審査員たちが待っていた。
会場はとても広く、屋根はガラスでドーム型になっていた。
周りにはいくつか建物があり、パルクール会場みたいだ。
「みんな揃ったね。」
クロムがみんなの顔を確認するように見回す。
「じゃあ、ルール説明するね。
二次試験のルールは”鬼ごっこ”だ。三十分以内に審査員を捕まえて数字の書いたカードを貰ってね。
もちろんいっぱいカードを持っている人が合格する確率が高いよ。
その他のルールは誰も殺さない限り何をやってもOK!みんな頑張ってね!」
クロムはニッコリ笑うと、金髪の少女がいるテントの下の席に座った。
審査員たちは準備運動をしているようだが、ダイヤは椅子に座って紅茶を飲んでいる。
このまま始まれば、みんなダイヤを捕まえることができそうだが…。
「鬼ごっこがこの国の防衛隊に入るための二次試験だって?
笑わせないでほしいんですけど。しかも、1・2・4番隊の隊長って子どもかよ。
こんなのでこの国は大丈夫なんですかね。」
黄みがかかった茶髪の青年が煽るようにクロムの方を見る。
クロムはニコニコとしたままだった。
たしかに俺も最初はそう思ったが、ここにいる審査員は皆、言葉にできないくらいのすごいオーラを放っている。
俺は黄茶髪の青年を横目に準備運動を始めた。
「お前らもこんなのが二次試験でいいわけ?」
「静かにしてくれないか、お前の声はとても耳障りだ。
———あと、そういう文句はこの試験に合格してから言うんだな。」
黄茶髪の青年は他の人に共感してもらえるだろうと思っていたのか、青髪の少年に否定されてしまいしょんぼりするどころか、怒り出してしまった。
「俺の名前はエルリック・テイラーだぞ!
この国のテイラー伯爵の息子なんだぞ。そんな口を聞いてもいいのか!」
「そうか。」
青髪の少年にサラリと流されてしまい、黄茶髪の青年の怒りは頂点に達したようだ。
伯爵ということは、そこそこ身分が高いようだが
王族のクロムの前で身分マウントを取るのはどうだろうかと思う。
「はいはい、喧嘩はそこまでや。もうすぐ始まるからな。」
狐の青年が呆れたように言う。
「後一分で始めるわよ。」
クロムの隣りに座る金髪の少女がタイマーを俺等に見えるようにおいた。
俺の中の緊張が心臓を潰してしまいそうだ。
「3・2・1…スタート!」
クロムと金髪の少女の合図で二次試験が始まった。




