14話 空色の景色
翌日、俺とニーニャの特訓が始まった。
まずは基本的な槍の使い方だ。魔力のこもっていない槍で練習した。
間合いの長さを活用し、離れた場所から相手に攻撃する。
何時間も練習してその日は終わってしまった。
また次の日には木刀を持ったニーニャとお互いに魔力を使わず打ち合いをした。彼の動きには無駄がなく、長い時間鍛錬をしてきたというのがすぐに分かる。
「今日はこのくらいにしておきましょう。」
ニーニャは茜色の空を見て言った。
この日は彼から一本もとることが出来なかった。
俺は寮に戻り、窓を開けて窓際から部屋の中を見た。ふと、あの空色の魔導書が目についた。
俺はなんとなく魔導書を開こうと思い、触れた。
すると、魔導書がうっすら光り、俺の視界が白み始めた。
遠くの方に何かが見える。
人だろうか。赤い巻き毛をフワフワと揺らしながら、こっちに走ってくる。
「ミラ〜。遅れちゃうよ〜。」
声のする方に顔を向けると長身で白髪の人が立っていた。
顔はよく見えないが、走ってくるミラという人に微笑みかけているようだ。
白髪の隣には、ほうきに乗って黒髪を結んでいる人がいる。
「ミラは朝から走る元気があっていいね。」
ミラが二人に追いつくと、黒髪は言った
その後も、三人は話しながら奥にある城のような大きな建物に入っていった。
今見えたものは何だったのだろう。俺は気がつくと自分の部屋の窓際にいた。
正しくいうと、”戻ってきた”なのだろうか。
手には空色の魔導書を持っている。これに触れた瞬間さっきの景色が見えた。
これも魔導書の力なのだろうか。
いや、もしかしたら慣れない練習で疲れが溜まっているのかもしれない。今日は早く寝よう。
俺は本を置き、ベッドに入った。
次の日、いつも通り訓練場に行くとニーニャとほうきに乗ったダイヤがいた。
「今日は花魔法について教えてもらおうと思ったので、専門家を呼んできました。力魔法のこと以外は僕はうまく説明できないと思ったので。」
「ニーニャが言うから来てみればライトか。ニーニャ、クロムに押し付けられたんだろ。」
俺はギクッと思ったが、ニーニャは笑顔で首を横に振った。
「よろしくお願いします…」
俺が細々と言うと、ダイヤが俺を見る。
「俺とお前の間に上下関係はない。それにボソボソと話すな。ナメられるぞ。」
「わ、わかった。」
言い方は厳しかったが俺のために言ってくれたのに違いない。たしかに合う人みんなに下手に出るのはときに、いいように利用されてしまうかもしれない。
「花魔法について教えてやる。俺の授業は有料級だぞ。」




