103話 瞳に宿すのは
西の国のある屋敷で、ザックはなにかの資料を見ている。
ザックがいた部屋のドアがコンコンとノックされる。
「入っちゃうよ〜。」
そう言いながら部屋に入ってきたのはクイードだった。
「魔法学校の校長が魔導書持ってるらしいけど行く?」
「いや、俺はいい。」
「そう?じゃあ、俺もいいかな。」
クイードはザックの前にある机に積まれた大量の資料をペラペラと見る。
「用がないなら、出ていってほしいんだが。」
「えぇ、そんな事言うなよ。仲良くしようぜ。」
「…、お前どうして、あの鬼…しかも弱い方に魔導書を渡したんだ?」
「え、バレてたかぁ。」
クイードは資料を机に戻し、後ろで手を組む。
資料を戻したのを確認するかのように、ザックはクイードの方を見る。
「彼なら、俺の願い叶えてくれそうなんだよねぇ。」
「お前の願いって何なんだよ。」
「君が教えてくれたら、教えたげるよ。」
「誰がお前なんかに教えるかよ。」
「じゃあ、俺もおーしーえないっ。」
ザックはチッと舌打ちをすると、また資料に目を落とす。
「…、本当は俺に願いなんてない。ただ、頼まれてるんだよ。」
「頼まれてる?誰に?」
「ここから先は有料だ。」
「えぇ〜。」
クイードはガックリと肩を落とす。
「俺は言ったぞ。お前の願いはなんだ。」
「俺は、大切な人を守りたいんだよ。そのためなら、何だってしてやるさ。
…もちろん、君を殺すことだって、…ね。」
クイードはザックの目を覗き込む。
ザックの目は赤く怪しく輝いていた。
魔人の鎌が振り下ろされる時、ヴァイオレットはギュッと目を瞑る。
すると、鎌の魔人から急に白い花が溢れ出し、花で埋め尽くされてしまった。
花にまみれた魔人の後ろにいたのは、ライトだった。
ウィルとメグも周りの魔人達を倒している。
「危なかった…、大丈夫ですか?」
「…!」
ヴァイオレットは感謝のハグをライトにする。
「な゙…。」
ソレイユはショックで固まってしまう。
そのことにライトは気づく。
「そ、ソルさん!これは…、その…。」
ヴァイオレットは、ライトから離れ、ソレイユの方を不思議そうに見つめる。
一歩、また一歩とソレイユに近づくヴァイオレット。
ヴァイオレットは優しくソレイユにもハグをした。
「はっ…。」
ソレイユは生き返ったように、瞳に光を戻す。
ヴァイオレットはソレイユをハグから解放すると、ソレイユに耳打ちをした。
「お!その考えいいな!」
ソレイユとヴァイオレットはニッと笑う。




