99話 Sacred treasure
会議室には、少しの沈黙が流れた。
「もう話すことがないなら、俺は帰らせてもらうぞ。」
ハニスは立ち上がる。
「あなたがそれでいいなら、私は構いませんよ。」
シェムがにっこり答えると、ハニスはシルファーをキリッと睨み、会議室を出ていった。
アリスは安堵の息をつく。
「アリスさん、お疲れ様です。重たい空気になってしまって申し訳ないです。」
「いえ、貴重な体験ができました。今日のことは兄に報告しておきます。
シルファーさんも来ていただき、ありがとうございます。」
「全然大丈夫だぞ。面白かったし、また来てみようかな、気が向いたらだけど。」
「ありがとうございます!」
「そうだ。あいつ出ていったから言うんだけど、お前らの国神器って自国にちゃんとあるか?」
「国神器?」
「東の国は花精霊の槍だな。」
「あ!はい、あります。」
「南はあるか?」
「いえ、かなり前から無いようで、私が王位を継承したときには、すでに自国にはありませんでした。」
「そうか…。実は俺の国の物も先日無くなっているのが確認された。ここ数日の話だ。
見つけたら、連絡してほしい。南の風の時計と北の月の仮面だ。」
「西はどうなんでしょう。」
「西の鳥の眼光の所有者は俺が知っている。あいつはきっと大丈夫だ。」
「では、南と北の国神器を見つけて報告すればいいのですね。」
「あぁ、協力感謝するぞ。」
シルファーはそう言うと、椅子から立ち上がる。
「じゃあ、俺もここらで帰らせてもらおうかな。」
「はい、ありがとうございました。」
シルファーが会議室から出たあと、アリスとシェムも会議室をあとにした。
チャイムが鳴り、一限の授業が終わる。
「やっと終わったぁ。」
『ソルは全然聞いてなかっただろう』
「いや、そんなことないぞ! 今日はアレだろ? ほら、アレだ。」
「全然聞いてないじゃん。」
ソレイユはニコニコして誤魔化している。
三人の顔色が急に変わる。
「何か、変なにおいしない?」
「そうだよなぁ。何のにおいだ?」
『外からだな 中庭を除いてみよう』
ソレイユは教室の中庭が見える窓を開ける。
「何だあれ!!!」
「何あれ!ダイヤは気づいてないの!?」
『実験室にいたら、このにおいには気づかないかも』
三人は空に大きく開いた穴を見つめる。
「とりあえず、中庭に出ようぜ。ヴァイオレットは城に連絡してくれ!」
「行こう!」
ヴァイオレットは頷くと水晶を取り出し、目を閉じる。
ソレイユとリュンヌは、さっき開けた窓から中庭に飛び出す。




