98話 鳥は昼を好む
「妹ちゃん、他に北の情報は無いの?」
「はい。これ以上の情報は持っていません。北の国の情報はシルファーさんからお聞きください。」
「そうだね。そうするよ。」
するとコンコンという足音が聞こえてくる。
暗い通路の奥から人影が見える。
その人影が近づいてくるのを三人は黙ってみている。
人影は三人の近くに着き一礼する。
「遅れてしまってすまない。久しぶりに来たものだから、少し道に迷ってしまった。」
「ほ、本物、なのか?」
「?…。そうだが。俺の偽物に会ったことがあるのか?」
「いや、そういうんじゃないけど。」
シルファーが座ろうと、椅子をひくと、影で隠れていた彼の姿が初めて見える。
長い脚に高い身長、黒い長髪を一つに結んでおり、影になっている顔にターコイズの瞳が光る。
長い耳には魔法石の飾り、それに頭には大きな角が二本はえていて、角の間にまた魔法石。
「その姿は…。」
「お嬢さん、どうかしたかな?」
「いや、絵で見たものと姿が違ったので。」
「絵?」
「あなた達3人の絵本があるんですよ。」
「そうなのか。」
シルファーは引いた月の模様の椅子に座る。
「そういえば、今日は誰かに来てほしいと言われていたのだが。」
「それは、私の兄です。使いの者を通して伝えさせました。来てくださってありがとうございます。」
「君のお兄さんが、俺を呼んだのに会議に来たのは君なんだ。」
「兄は幼い頃から体が弱く、今日も体調を崩してしまったので、私が代理できました。兄の無礼をお許しください。」
アリスは立ち上がり、頭を下げる。
「いや、いいよ。お兄さんによろしくね。」
彼の声は優しいが、岩のように重い。
アリスは頭を上げ、椅子に座った。
「では、はじめましょうか。」
「で、息子さんはみつかったの?」
「いえ、けれどもあなたが情報を持っているのは確実です。」
シェムはハニスの方を向いて言う。
「俺?何度もいうけど、俺は何も知らないよ。あのちびっこが、嘘ついてるだけかも。」
「ダイヤさんは意味のない嘘はつきません。」
「そう?まぁ、俺はあのちびっこ信用できないね。あいつの言う事、八割嘘だと思うけど。」
「嘘…。」
「そうだよ、妹ちゃん。あいつは俺のことを魔女と呼び、魔女とは協力しないと言った。でも、東の国軍に”魔女”いるでしょ?
あいつは、俺にはバレていないと思っているかもしれないけど、俺をなめてもらっちゃ困る。俺と協力しない本当の理由が知りたいな。」
「東の国軍に魔女…?その情報はどこから手に入れたものなのですか。私にはその情報がありません。」
「優しいお兄さんが、君を心配させないように嘘をついている、あるいは隠しているのかもね。
俺にも言えることだけど、周りに嘘をついているやつは、多かれ少なかれ必ずいる。すべてを信用してはいけないよ。」
「まぁ、お前の言いたいことは分かるぞ。」
「シルファーもそう思うのか。」
「あぁ、そうだな。お前が嘘をついているということがよぉく分かった。」
ハニスは、明るくシルファーに話しかけたが、今の彼はシルファーを睨んでいるように見える。




