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怪談集  作者: appipinopi
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夜の歯医者

ある町に、深夜だけ営業する歯医者がいた。


「夜しか通えない患者さんのために」と、看板にはそう書かれていた。


初めてその歯医者を訪れた男は、中が薄暗く、消毒液の匂いが鼻を刺すような場所だった。


「痛いところはどこですか?」

白いマスクをした医師が尋ねる。


「奥歯が…ずっと疼いていて…」


男は診察台に横たわり、口を開けた。


「ああ、これは虫歯じゃないですね」

医師の声が冷たく響く。


「じゃあ、何だ?」


医師はゆっくりと器具を手に取り、男の口の中を覗き込んだ。


「歯の間に、ずっと埋まっていたものですよ」


男の背筋が凍りつく。


「ほら、取れました」


医師がピンセットでつまんで見せたのは――


男の幼い頃に亡くなった弟の、小さな指の骨だった。


…男は思い出した。


あの日、弟とふざけ合っていて、誤って階段から突き落としてしまったことを。


弟の泣き声が聞こえなくなるまで、慌てて土をかぶせた庭の場所を。


そして、その夜から、なぜか奥歯が疼き始めたことを――


「さあ、治療は終わりです」


医師のマスクの横から、男の知っているあの子のえくぼがのぞいていた。

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