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学校
俺の通っていた小学校には、ある奇妙な噂があった。
「夜の学校には“もう一人の生徒がいる」
最初はただの怪談話だと思っていたが、ある日、先生に忘れ物を取りに行くよう頼まれた。
夜の学校は静まり返っていて、廊下を歩くたびに自分の足音だけが響く。職員室で忘れ物を探していると、不意に聞こえた。
「……ねえ、一緒に帰ろう?」
背筋が凍った。振り向くと、教室の前に誰かが立っている。
制服姿の女の子。でも、顔が見えない。
「……待ってるよ……」
そう囁くと、彼女はふっと消えた。
慌てて荷物を持ち、職員室を飛び出す。だが、長い廊下を走る途中、違和感に気づいた。
さっきより、窓に映る“自分”の影が増えている。
次の日、先生に話すと、困ったように笑った。
「君も見たのか。あの子、いつも誰かを待ってるんだよ。昔、この学校にいた子なんだけどね……もう、いないはずなのに」
俺はもう、夜の学校には近づかないことにした。