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怪談集  作者: appipinopi
11/13

ヘルニアの夜

ある寒い雨の夜、疲れ切った整体師・森田は、最後の患者を診終えて施術所の片づけをしていた。


「ああ、今日もヘルニアの患者が多かったな……」


最近、森田の元には「原因不明の腰痛」を訴える患者が増えていた。レントゲンには異常がないのに、激痛で動けなくなるという。奇妙なのは、全員が「背中に冷たい手が触れたような感覚があった」と口を揃えて言うことだった。


片づけを終え、森田は施術台に腰を下ろして一息ついた。その時──


ギシッ……


不意に施術台が軋んだ。


「……誰かいるのか?」


振り返っても誰もいない。しかし、ふと自分の腰に鈍い痛みが走った。


「なんだ……まさか俺までヘルニアか?」


次の瞬間、背中に氷のように冷たい指が這うのを感じた。


「ッ……!?」


振り向こうとするが、体が動かない。まるで何者かに押さえつけられているようだった。


そして、耳元でかすかな囁きが聞こえた。


「……ずっと、痛いでしょう……? 私と同じように……」


鏡を見ると──そこには首の曲がった女が森田の背中にへばりつき、椎間板を引き抜こうとする手が見えた。


翌日、森田の施術所は閉鎖された。彼は消息不明となり、代わりに施術台の下から「30年前に行方不明になった女性整体師」の遺骨が見つかったという。


彼女は、重度のヘルニアに苦しみながら、誰にも看取られずに亡くなっていたのだった……。


(……あなたのその腰痛、本当に「ヘルニア」ですか?)

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