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ミリアとコータ  作者: hachikun
9/27

出港へ

2025/03/20 しっぽの色の記述を訂正:シマシマ→色記述なし。初期稿の色設定が残っていた。

 船内に入るとすぐに背後で扉が閉じた。プシュッと音がした。

「!」

『機密扉だよ、空気が漏れると大変だからね』

「あ、そっか」

 ミリアは突然の音に驚いただけのようで、理由さえ知れば納得顔になった。

 そして改めて周囲を見て、まるで警戒するようにキョロキョロと壁などを観察する。

『なに?どうしたの?』

「警戒」

『警戒?なにに?』

「もしかしたら、何かいるかもでしょ?」

『何かって?』

「……なぞのエイリアンとか?」

『なんで疑問形なのさ』

「油断すると、壁から出てきて殺されるの。確認は必須なのよ」

『おい、なんでそんなネタ知ってんだよ!古すぎるだろ!』

 思わずコータは全力で突っ込んだ。

「知ってるんだ。コータ、くわしいねえ」

『それ僕のセリフだよ……大丈夫だから、そこのゲスト席に座って。ほら!』

「あはは、ごめんね」

 笑いながらミリアは、コータを抱えたまま座席についた。

 座ると警告音が鳴って『おひとりずつ座ってください』と怒られた。

「え?え?」

『ほら放してミリア。僕は僕で座るから』

「なんで?猫はいいのよ」

『よくないって』

 小型生命体用の席も一つ用意されていて、コータはミリアの手を離れてそちらに座った。しかも猫のように丸くなるのでなく、人間のように着座している。

 その姿はミリアからみると、まるで猫妖精(ケットシー)のようだった。

「かわいい」

『いやいやいや』

 どこまでもミリアはマイペースだった。

「あの!」

『なんでしょうお客様?』

「コータが遠すぎるの!」

『承知しました。ですが、椅子はひとり一つずつでお願いします』

「わかった!」

『おい』

 船のコンピュータが勝手に気を利かせて、ミリアの横にコータの席を移動してしまった。

 うふふと幸せそうに、やはりコータをなでるミリア。

 コータは困った顔をしたが、ミリアを拒否するでもなくされるがままだった。

『腹をなでるな、おなかこわすだろ』

「ねえコータ、しっぽジャマじゃないの?……あ、しっぽ穴あいてる」

 コータの長いシッポは、きちんと椅子の穴から後ろに出ていた。

『ミリアの椅子にもあるよ、見てごらん』

「ほんとだ」

 なるほど、いくつか並んでいる椅子にはすべて背面下部に穴があった。

 でも座っている分には全然気づかない。

「ふしぎ。穴が開いてるのに気づかなかった」

『ソレも立派な銀河文明の技術さ。シッポがあってもなくても快適にできるよう設計されてるんだ』

「すごい」

 そんな会話をしていると、やがてアナウンスが流れた。

【出発いたします。予期せぬ衝撃にそなえてください】


 

 ◆ ◆ ◆

 


 出発は一瞬で、特に衝撃も何もなかった。

 ふたりがいるのは客席なので、窓──そう、窓がある──窓の向こうの風景が見えている。

『ほんとの窓じゃないけどね』

「そうなの?」

『安全第一だからね、窓に似せて外の映像を投影してるのさ』

「あー、景色は本物?」

『基本的にはね』

 話している間にも、星空は少しずつ動いている。

 ミリアはその風景を、何かを探すように見ていた。

『もしかして地球を探してる?』

「ばれた?」

『ばれたばれた、ごめんね。ここから地球は見えないかな』

「もしかして方角違う?」

『方角もそうだけど、遠すぎてミリアの肉眼じゃ難しいかな?』

「……えっと、現在地を聞いていい?」

『地球からみれば、木星の影になると思う』

「もくせい!?」

 ミリアの目が点になった。

『どしたのミリア?』

「……宇宙って、お月見どうやってするのかな?」

『ミリアってほんと大物だよね、ある意味』

「ふふん、それほどでも」

『何ドヤ顔してんの、念のためにに言うけど、ほめてないからね』


 

 ◆ ◆ ◆

 


 そうこうしているうちにも、船は進んでいく。

「このお船がシャトルだったら、本体?のお船に乗り換えるんだよね?」

『そうだよ』

「どこにあるの?」

『えっと……うわ、あれだよ』

「?」

 コータの反応が途中からおかしくなったのに気付いたミリアは、コータの視線をおいかけてみた。

「あれなに?」

『いやーびっくりした、天翔船(てんしょうせん)なんて持ってきてたんだ』

「えっと、なんなのあれ?」

 ミリアの困惑は無理もない。

 何しろ宇宙のど真ん中に、どう見ても木造建築としか思えないナゾの物体が浮遊しているのだから。

 いや、停泊か?

『ボルダ名物「天翔船」だよ』

「てんしょうせん?」

『天空を翔ぶ船、つまり宇宙船だけど、あれの製作元ではそういう呼び方なのさ』

「え、あれが宇宙船なの、ほんとに?」

『面白いだろ?銀河ひろしといえども、さすがに木造の宇宙船は珍しいよ』

「そうなんだ……ちゃんと気密性保てるの?」

『大丈夫だ、木造船はすべて有人船でね、見た目に反して信頼性もあるし快適らしいよ』

「らしい?」

『僕もはじめて乗るんだ。こんな遠方の航路で使うなんて珍しいよ』

「そうなんだ……異常事態?」

『そうだね、異常といえば異常かな』

 そんな話をしていると。

 

【ドッキングします。揺れることがありますので座席についてください】

 

『あいよ、ほら、ミリアも座りなおして』

「はーい」


人間(アルカ人)の立ち位置について:

 銀河での立場は第二位とされていますが、それは数でなく大人の事情によるものです。

 実際の数は、筆頭であるアルダー(トカゲ)が圧倒的多数なのもあり、どちらかというと少数民族に近いです。

 そもそもアルカ人が第二位に据えられたのは、アルダー(トカゲ)とアマルー(猫)が非常に中が悪く、そのどちらとも普通に共存できるアルカに白羽の矢が立ったという記録が残っています。

 実際、アルダーの地にアマルーはおらず逆もしかりなのですが、アルカの地にはどちらもいます。特にアマルー人はたいへん親和性が高く、混血も多数見られます。


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