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ミリアとコータ  作者: hachikun
22/27

覚醒

『ミリアっ!!』

「え……!?」

 その瞬間、コータがミリアの前に飛び出した。

 

 そして──バンバンと大きな音と共に、その体にいくつもの穴があいた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 たしかにミリアには優れた才能があったが、しかしまだ初心者。

 なにせ、つい先日まで日本で暮らしていたのだ。

 たしかに一般人よりは不穏な環境に育ったが、それでも常在戦場というほどの鉄火場ではなかった。

 その些細な相違が、一瞬のところでコータとの差になってしまった。

 だが。

(……)

 小さな猫の体には、どうみても死ぬとわかるレベルで着弾していた。

 たとえ銀河の技術によるサイボーグだからって、これでは無理だろう。

 すべてが命中したわけではないけど、それでもミリアに当たった弾丸など存在しなかった。

 完璧に守るべきひとを守り──そして倒れたコータ。

 そしてあとには、凍り付いたようなミリアが立ちすくんでいた。

 

 普通なら、それで終わり──フリーズしたミリアに次々と弾丸が撃ち込まれ、彼女は死んだろう。


(……)

 

 だけどその時、ミリアに異変が起きた。

 黒い瞳が突然、虹色にキラキラと輝き出した。

 そして、かわいい口が言葉をつむぎだす。

 

【障壁展開】

 

 その次の瞬間にバン、バンと音がしたが、しかしただの一発もミリアには当たらない。

 いや、弾丸がそれたのではない。

 すべての弾丸は──ミリアの手前の空中で停止していた。

【……】

 その冗談のような風景を、ミリアは無言のまま睥睨(へいげい)した。

 たしかに元々饒舌(じょうぜつ)なタイプではないが、それにしてもおかしい。

 そしてコータに弾丸を撃ち込んだ者を見た。

【……】

 それは先日、ミリアに缶コーヒーを売った店員だった。

 もしミリアがまともな状態だったら、自分が情報共有してなかった迂闊さに気付いたろうが、今のミリアは全く頓着しない。

 ミリアの目が細められ、同時に口が動いた。

「あ……」

 女が何か言おうとしたが、もうその時間はない。

 

【空間切断】

 

「ぎ!?」

 その瞬間、女の体は構造も何もかも無視して、三つの横のラインで音もなくスライスされた。

 ボロボロと床に崩れ落ちる肉塊。生暖かい、おびただしい血液が周囲にまき散らされた。

 少し遅れて、強烈な鉄錆のような異臭が漂う。

 頭がきれいなのが奇跡のようだが、もちろん即死していた。

 

 ミリアの挙動はまだ止まらない。

 弾丸たちに向かって、一言つぶやいた。

【遅延反射】

 そしてコータの元に移動した。

 亡骸にしか思えない血まみれの肉体を抱え上げたかと思うと、そのまま、ミリアもコータも陽炎のように揺らぎ消えてしまったのである。

 

『──な』

 だが彼らは最後の言葉を続けられなかった。

 なぜならその瞬間、止まっていた弾丸のすべてが冗談のように180度後ろに向いたかと思うと、飛んできた勢いそのままに打ち返されたからだ。

 たちまち、数名の悲鳴が広がった。

 

 さすがにプロだけあって最初の女以外は死にはしなかったが、一発も当たらない者はいなかった。

 彼らが騒ぐまでもなく、警備ロボットたちが駆け付けた。

 区画は閉鎖された。

 そして──数体のロボットにミリアとコータを探す役目を与えられ、それらは船内に散っていった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 コータを抱えたミリアの転移した先は、先の精霊界だった。

 しかし妖精たちと精霊女王を見た瞬間、ミリアの虹色の目は光を失った。

 そして、そのままミリアはコータもろとも昏倒した。

 たちまち妖精たちと精霊女王に保護された。

『たいへん、コータ死にそう!』

『このコもたいへん、どうするの?』

『ちりょうよ、ちりょう!どっちも!』

『すぐなおすの!』

『このコ、まりょくがないよ!つかいきってる!』

中の子(・・・)にまりょくあげるの!』

 ミリアは意識がないようで、まったく動かない。

 

『魔力を使い切ったか』

 精霊女王がミリアのそばにやってくると、身をかがめた。

 ミリアの中にある何かが女王に反応した。

 手をのばすと、女王の体から何かがミリアに流れ込みはじめる。

『じょおうさま』

『なんじゃ?』

『中の子、だいじょうぶ?』

『だいじょうぶじゃが、少々無理をしすぎたのう』

『……おそとでだいじょうぶ?』

『あくまでミリアの一部じゃからな……ミリアとて成長するし、コータもいるから問題ないじゃろう』

『んー、でもコータも、あれだよ?』

『ふふふ、まぁそう言ってやるな。幼子は皆で守らねばな』

『……それもそうだね』

『うむ、それが大人の役目というものよ』

『うんうん』

『まったく、こもりはたいへんだ!』

『あ、こら、さぼってないで、てつだいなさーい!』

『おー!』

 妖精たちは、わちゃわちゃと団子のようになりながらも仕事を果たし、そして用がすめば好き勝手に散っていく。

 しばらくすると、コータとミリアの息がやわらかい寝息にかわった。

『問題ないようじゃの、よし、そろそろ打ち止めじゃ』

『はーい』

 残りの妖精たちも治療の手をやめ、思い思いの場所に散っていた。


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