表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

Ⅰ壮年よ大志をいだけ!俺はヒーローになる

 戦えっ!


 俺は50を超えて思うことがある。

 何故、ロボットものやヒーロー戦隊ものの主役は若者がなんだろうかと、そりゃ、若い方がいろいろと動けるし、悲しみを背負っている感とか説得力があるのも分かる。

 だが、未来を担う若者にもしものことがあったら、年輩者たる立場がないではないか・・・。

 ならば、俺達の世代がヒーローやロボットを操縦しても一向に構わんのではないかと。

 いや、分かる、分かるよ、そんなんおじさん、おばさんが主役の話なんて誰が見るねんと、需要ないやんと、だけど、もしリアルでそんな事があるとすれば俺はやってみたいと思う。

 会社の社畜として、もう少しで30年、人生もとっくに折り返しを迎えている、ここいら、なんかワクワクすることをやってみたいなと思わずにはいられない。


 会社からの帰り道、そんなことをぼんやり思いながら、電車に揺られ1時間、それから駅から徒歩で30分家へと戻る。

 

ポンと暗い公園の小道で肩を叩かれた。


「よく言った」


 相手方の突然の予期できぬ行動に、吃驚して戸惑いを覚えた俺は、


「は」


 と、訝し気に言った。


「なあ、日本いや地球を救わないかい?」


(なに言っているんだこいつ)


 俺は警戒を解かずに、意味の分からぬことをほざく言葉の主を見た。

 年の頃は俺と同じくらいで、今は夏なのに青いマフラーをしている。

 こいつ戦隊かぶれか、やべぇ奴に出会ったものだ。


(こういう時は・・・かかわらないのに限る)


 俺は反転しダッシュでその場を去ろうとする。

 が、後ろの草むらでピンクのマフラーを首に巻いた熟女が現れる。


「待って」


(いやいや)


 続けて、公園のトイレから男女のトイレから、黄のマフラーをつけたおそらく同年代の男性と白いマフラーをつけた若い女性(おそらく年は10は離れていそうな)がでてきた。


「待ちんしゃい」

「マッテクダサーイ」


(怖い怖い怖い)


 ここまで来ると、恐怖だ。

 じっとしてれば俺は連れ去られてしまう。

 だが、前も後ろも間も変態たちに囲まれている。

 

(ショートカットだ)

 

 俺は草むらへと飛び込んだ。


「落ち着け」


 俺は背後からがしりと両手で両肩を掴まれた。


「お前は」

「よう」


 そいつは10数年ぶりに会った幼馴染のタカシだった。

 やっぱり緑のマフラーを首に巻いている。

 こいつもやべぇ奴らの仲間なのか・・・。


「なあ、ヒロシ」


 タカシは俺の名前を懐かしそうに呼んだ。


「なんだ」


「仲間になって世界を救ってくれ」


「断る」


「何故だ」


「そんな気持ち悪い妄想に付き合ってられるか」


 タカシの肩をぽんと叩き、青いマフラーの男が言った。


「ケンジ」


 タカシは青マフラーの男をそう呼んだ。


「どうしてそういえる」


「・・・どうしてって・・・そんなの嘘だろ」


 突然、現れた5人は一斉に首を振った。


「・・・お前たちは、いつまでも戦隊ごっこをしていて恥ずかしくないのか」


 俺は震える人差し指を全員に向けた。


「ダメだこりゃ」

 と、黄色マフラー。


「キタイハズレデスネー」

 と、白マフラー。


「他の仲間を探そう」

 タカシは俺を仲間にするのを諦めたのか溜息をついた。


「いや、ヒロシしかリーダーにはなり得ない」

 ケンジは断言する。


「しかし本人が・・・無理強いをしては・・・」

 タカシは苦い顔をする。


 

「是妙寺博士の言葉絶対だ」

 ケンジは自分に言い聞かせるように言った。


「・・・だけど」

 ピンク熟女は呟き、

「ソレハソウデスガー」

 白い女は首を傾げた。


「椿、マリア、彼の力が必要なんだ」


「しょうがないのう。ケンジは言いだしたら聞かんもんけん」

 黄レンジャーは言った。

 その言葉にこくりと頷くタカシ。


「・・・みんな」


 俺が一刻も早く、この場を立ち去りたい気持ちでそっぽを向き、 ケンジが皆を見た瞬間、地が揺れた。

公園の舗装された道に亀裂が入り、地が割けると、底の闇より光る巨大な物体が現れた。


「デス・ロボットっ!」

 タカシは叫んだ。


「みんなっ!」

 ケンジは皆に呼びかける。


「おうっ!」


 彼らは、腕時計型の発信機にその名を呼んだ。


「GOっ!オジーオバーSUNっ!」

 

 キラリン。

 夜空に光る物体が現れる。

 一般市民たちは指をさす。


「あれは何だ」


「鳥だ」


「飛行機だ」


「いんや」

 タケシは誇らしげに言う。


「マイダーリントアタシ、ミンナノ、ガッタイ、ロボデース」

 マリアは空より飛来するロボットに両手を振る。

 

 ロボが接近すると、ジェットのけたたましい轟音が辺りに響く。


「ヒロシ、これで信じてくれるかな。このロボはオジーオバーSUN。地球侵略を目論む異星人ベリルダリアンとの唯一の対抗兵器」


「・・・なにがなんだか」


「それは仕方のないことよ」

 椿は寂しそうに笑って言った。


「とにかく乗ってくれ。このままでは君の安全が確保できない」

 ケンジは俺に手を差し伸べた。


「・・・・・・」


「シニタクナイナラノルデース」


「早くしんしゃい」

 と、夫妻。


「ヒロシ」

 タカシは不安気に俺を見つめる。


「わーったよ」

 これが現実でも虚でも、真剣な彼らの妄想に付き合うのも悪くない。

 俺はそう思った。

 彼の手をがしりと掴む。


「よぉし、サン・フェード・インっ!」

 上空、30mに位置するオジーオバーSUNロボから光線が発せられ、俺達はロボット内へと吸い込まれた。


「ここは」


「コックピットだ。本来は6人の力の結集で動かせる」


「6人目・・・それが俺ってことか」


「そうだ」


 円環状に6色のコックピットがあり、皆はそれぞれの色の場所に乗り込んでおり、赤色だけ空席となっていた。


(赤ってリーダー位置じゃん)

 俺は一瞬戸惑う。


「ヒロシ、とりあえず、そこに座ってくれ」

 タカシは言った。


「ああ」

 こうなったらなるようになれだ。


 対峙するオジーオバーSUNロボと敵ロボット。


「敵、ベリル・ビースト・ロボタイプB型、ヒグマ獣です」

 椿が敵の情報を伝える。


「よし。敵が町を破壊しかける前に、交戦地域を策定」


「ラジャ、南南東26㎞先ニ被害最小限地域の山岳地帯アリネ」

 マリアは即座に地域を示した。


「分かった。グリーン、乙兵器ロケット・サンバーンで敵を攻撃共にその地へ」


「OK。ブルー。乙兵器、ロケット・サンバーン、ロックオン」


「てーっ!」

 

ロボ・オジーオバーSUNの拳が離れ、ヒグマ獣のどてっ腹にぶち当たる。


「ロケットパンチ・・・か」

 俺は呟いた。


「SUNジャンプっ!」

 ケンジのかけ声で、ロボは高々と地を蹴って飛びあがり、ヒグマ獣の両肩に乗った。


「最大圧力」


「了解っ!」

 拳から、ロケット噴射し、ヒグマ獣は彼方へと飛ばされる。

 

オジーオバーSUNはヒグマ獣の上、両腕を組み、仁王立ちで悠然と構える。


「まもなく到着。付近に人無し。安全確保」


「よし」


 オジーオバーSUNは、後ろへステップを踏むとヒグマ獣を蹴り上げ、山に激突させる。


「ぐぉぉぉぉぉっ!」

 這い出て怒り猛狂うヒグマ獣は真っすぐにオジーオバーSUNへと向かってくる。


「とどめだ。sunsun SUNソードっ!」

 すらりと背中から大剣を抜き去り、身構える。


「光煌刃」


 敵の鍵爪の一撃を華麗にかわしつつ、反転し一閃。


「ぐもももももももっ!」


 ヒグマ獣は爆音と共に消滅した。


「よっしゃあああっ!」

 5人は喜び合う。


 こんな事が現実にあるのか、俺は夢でも見ているかと疑いたくなる。


 ほどなくして、ヘリが近づいてきた。

 ロボのモニターに様子が映し出される。


「是妙寺博士だ。繋いでくれ」

 ケンジは言った。


 俺は映し出されたじじぃを見て驚愕した。


「・・・親父」

 40年前忽然と姿を消した父親が目の前にいる。

 

「間違いない」

 俺は呟いた。


「ヒロシ」

 親父は俺の名を呼ぶ。

 そうか、あいつは知っていたんだ。


「オジーオバーSUNにのれぃ」


「エ〇ァに乗れいみたいに言うな」


「人類は未曽有の危機を迎えておる。お前はオジーオバーSUNパイロットの適合者だ。仲間とともに平和を守れぃ」


「第三者感がハンパないな」


「乗るのか乗らないのか」


「二者択一ってか、乗らないと言ったら・・・」


 その場に緊張感が走る。


「その時は、ロボから降りろ。お前は用済みとなる。ただし、ヘタレであることをSNSで拡散し、あることないことをでっち揚げ、社会的に抹殺する」


「歪んどる」


「どうするのだ」


「乗るよ。乗る。」


「それから」


 親父は何かを求めているようだ。

 欲しがっている。

 絶対、言うか。

 すると、親父が小声で囁く。

 つーか通信しているので周りに丸聞こえだ。


「ボクはオジーオバーSUNロボットパイロットの一丁目ヒロシですっ」


「言うかっ!クソじじい」


 こうして、俺はオジーオバーSUNロボのパイロットとなったのであった。



 いくつになっても(笑)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ