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魔法使いの作り方  作者: アシカDX
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序章

序章


その昔、世界に4人の魔法使いが降り立った。

4人は魔力を出し合い、1本の木を創った。

その木は枯れることなく魔力を湛え続け、その名を「魔樹(まじゅ)」とした。

魔法使いたちはその木を使って更なる魔法世界を築いた。


4人のうちの2人は魔樹の皮から紙を作り出し、魔札(まふだ)として使用し始めた。

魔札はそこに命令を書くとその通りに作用するように作られた。

また、人や動物の形を作ると実体化させることもできた。

そうして2人は人々と動物を創り出していった。

この魔札を使う魔法式を、2人は「夢幻術(むげんじゅつ)」と名付けた。


4人のうちのもう2人は魔樹の枝から杖を作り出し、魔力を流すことで自分の魔法の流れをコントロールし始めた。

繊細な魔法を作り出すことも可能になり、2人は日々、星の瞬きや花の揺らぐそよ風などを創り出して世界を彩っていった。

この魔樹から作った杖を使う魔法式を、2人は「エーテリマジック」と名付けた。


魔札から生まれた人々や動物が子孫を残し、魔樹から生まれた杖によって世界が端まで豊かになった時、4人はこの世界に名前をつけた。

それが「夢幻(むげん)エーテリウム」の誕生だった。



***



やがて4人が散らばり名前も風化していくと、人々は互いの価値観の違いから小さな紛争を起こすようになった。

かつては互いに助け合い、新たな魔法を生み出して暮らしていたものの、その中で魔法に対する価値観の違いからいがみ合うようになっていた。



夢幻術を扱う者たちは自分たちの使う魔法に誇りを持っていた。

規律を守り、個々の持つ魔力を世のため人のために使うことを決めていた。


一方でエーテリマジックを扱う者たちは自分たちの魔法を使って世界を彩ることに夢中だった。

自由を愛し、思うままに自己表現をすることで互いの思いを伝えあった。


一方は何事にも縛られない生き方が気に入らず、一方はがんじがらめの生き方が気に入らなかった。


そこから毎日争いが起こるようになり、やがて2種類の魔法族はそれぞれ固まって暮らすようになり、大きな壁を建て、互いに立ち入らず、干渉しないようにするという決断を下した。



2つの種族がそれぞれに生活を初めてしばらくは平穏だった。

しかし、時が経つにつれて壁がもろくなると、その周辺での魔法族間のトラブルが増えた。

落ちた瓦礫が向こうから投げ入れられたと言ってみたり、積もった瓦礫で敷地が侵されたと主張したり、間を取り持つ中立の立場が必要になった。


争いが激化して魔法の暴走をぶつかり合わせるほどの大事になったとき、それを収める者たちが現れた。

互いの魔法族同士が気絶させる魔法を掛けるなどして強制的に引き離していたが、それからは壁周りでいざこざが起こらぬように自然と見張りを立てあって壁を監視し始めた。

そしていつかのこと、しっかりと組織化し、互いに協力して壁の治安を守ろうということになった。

それが『守護団(しゅごだん)』の始まりだった。

壁の中心部分に見張り塔を建て、互いの魔法族から選出された力自慢が見張りを請負った。


時に守護団自身も怪我を負うほどの規模でいさかいが起きるため、その者たちを治療する『癒院(ゆいん)』が見張り塔に併設された。

癒院では事件が起こるたびに続々と魔法族が運ばれ、どちらに属しているかによって治療法が異なった。

これは体内を巡る魔力が魔法式によって微妙に異なるためである。



こうして力ずくでの争いはなくなったが、今度は言い争いが絶えなくなった。

仲裁に入ろうとしても聞く耳を持たず、然るべき場が必要になると、『会議館』という存在が作られた。

夢幻術師とエーテリウィザードから中立を誓う者を立て、争いごとを起こした者たちから意見を聞き、一つずつ議論し解決へと導いていった。

それからその後の暮らしの中でお互いの認識を一致させておくべき事由を話し合い、それぞれの暮らしの質を安定、向上させていった。


「守護団」、「癒院」、「会議館」の3つは完全中立の立場で壁に沿って建てられており、そこに属す者たちはどちらの立場にも肩入れしてはならないと定められていた。



***




時が経ち、世界の始まりもおとぎ話の一部になった頃、それぞれの種族内では魔力の強弱によって住む場所が分けられ始めた。

魔力の強いものはほとんど助力なく生活できるため、中央組織に頼らずとも生活できた。

よって一番外側の静かな場所に集まって暮らし始めた。

これを『上級居住区』とした。

魔力の弱いものは体調を崩しやすく癒院で魔法薬をもらうことが多いため、中央に近い場所で集まった。

これを『下級居住区』とした。

その間に住む者たちは最も多く、今日(こんにち)の一般的な魔法使いのロールモデルとなっているといえる。

これを『一般居住区』とした。


そして魔力の強弱を測るとともに、魔法の制御に関しても問題視される部分が多々あったため、子供の時分より制御を学ぶのが得策であると考え、また、その際に夢幻術とエーテリマジックの魔法思想が混ざり合わぬよう、魔法の暴走を起こしても被害が広がらぬよう、上級居住区よりも郊外に大きな敷地を持つ学校を築くこととなった。

夢幻術師が通う『夢幻学園』

エーテリウィザードが通う『エーテリアカデミー』

学校には10歳から通い始めることができ、16歳で卒業となる。

6年間で魔法の知識や制御の方法を覚え、最終試験で基礎ができている状態と認められることが必須条件である。

また、魔法の基礎は全員が学ぶべき義務教育であるため、10歳になると居住区に関係なく入学の報せが届くことになっている。

特例でない限り、入学を拒否することはできない。



***



そしてここから語る物語は、世界の始まりが伝説に、魔法使いの始祖が架空の神のような存在になった現在の『夢幻エーテリウム』で起こったできごとを記したものである。

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