こっぴどく振られた私は、もっとランクの高い人と付き合って幸せになります!
「ごめん、付き合えない」
ある日の放課後、片思いしていた友人であるフェルデに告白したら振られてしまった。
「どうして? 理由を言ってくれないと納得できないんだけど」
「だってミサキってさ、胸小さいし、髪だって短いし、男にしかみえないんだよね。言葉遣いだって荒いしさ。いまいち好みじゃないって言うか、どっちかっていうとお前の親友のフェイランちゃんの方が好みなんだよね」
フェイランとは胸が大きく、カラスの濡れ羽色のように艶のある長髪で、上品なお嬢様のような雰囲気の人だ。私とは正反対な女性である。
「ああ〜、この手紙の主がフェイランちゃんだったらな~。字が綺麗だからフェイランちゃんからだと思ったらお前だったなんて興ざめだよ。お前、字は綺麗だったんだな」
煽るように笑うフェルデ。こんな屑みたいな男だったなんて知らなかった。友人として付き合ってるときは確かに毒舌なところがあったが、こうも酷かったとは。恋が盲目とはまさにこのことである。痛感した。
「というかさ、お前って本当は男なんじゃねぇの? ちょっと証拠見せてくれよ。ここでスカート脱いでさ」
「告白されたからって調子に乗らないでよ! もうあんたなんてこっちから願い下げよ!」
目の前にいるゲス野郎に怒りの鉄拳を食らわせる。「ゴハァ!」という悲鳴とともに彼は吹っ飛び、机に体を打ち付けて気絶した。
「もう絶交だからね! 話しかけんじゃないわよ!」
唾を吐いて立ち去る。なぜこんなクズに惚れてしまったのか……数分前の自分を同じように殴ってやりたい。涙が出てくる。振られたのも勿論だが、今までこんな奴を好きになっていた自分が情けないのだ。
「こうなったらもっと魅力的な人を見つけてギャフンって言わせてやる」
そのためにはまず自分が魅力的な女性になることだ。今日から自分磨きを頑張ろう。家に帰ってさっそく運動から始めた。
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「ということで今に至るんだけどさ、確かに前よりはモテるようになったよ? でもいまいちピンとくる人がいないんだよねぇ……」
ある日のお昼休み、私は親友のフェイランと屋上で昼食をともにしていた。
「はぁ、フェイランちゃんが男だったらなぁ……一番条件に合うんだけど」
彼女は魅力的な要素の塊なのだ。女性にだって人気がある。そんな彼女が男だったらあんなドクズの塊になんて告白しなかっただろう。
「先週フェルデくんに告白されていたようですけれど、付き合わなかったんですか?」
「当り前じゃん。あんな振られ方されたのに今さら恋人になんてならないよ。もう過去の男だよ」
そう、私がモテだしたのをいいことに、向こうから「今なら付き合ってやってもいいよ」と告白されたのだ。もちろんぶん殴って断った。
「へぇ~、そうなんですの。ところでミサキちゃん、ずっと秘密にしてたんですけれど、この胸って魔法で大きくしてたんですよね」
そう言って胸に手を添えると、風船のように萎んでいって平らになった。
「えっ、マジで!? すごーい! あとで教えてよ!」
「いいですよ」
まさか魔法で大きくできるなんて朗報である。これでもっと魅力的になれるだろう。一番の弱点である貧乳が治るのだから。
「それにしても、長髪って面倒くさいよね。ご飯食べる時も垂れてきて邪魔だし、毎朝セットするのにも時間が掛かるしさ。それでいつも早起きしなきゃならなくて寝不足で……ふぁ~……」
さっきから食事の邪魔しているこの髪を触りながら文句を垂れる。
「実はですけど、この長い髪って魔法で整えてるんですよ。本当はもっと短くて、硬い髪なんですよね」
そう言って魔法で髪を短くしたフェイラン。たしかに髪質が硬そうで、少し癖っ毛がある。整った顔立ちと平らな胸のせいなのか美青年に見えた。
「はえ~、まるで男の子みたいだね。あっ、ごめん。男みたいって口にしちゃった。自分が言われて嫌なことを人に言うなんて最低だね……」
「ううん。気にしませんよ。事実ですし」
「本当にごめんね」
* * *
「はぁ~、どこかに家柄が良くて私のこと好きな人いないかな~」
弁当を片付け、今は雑談タイムである。話題も特にないので、私の理想の旦那様の話をしていた。
「そうですね……ところでミサキちゃん、実はわたくしの家って公爵家なんですよね」
「そんなの知ってるよ。長い付き合いじゃん。というかよく子爵の私なんかと一緒に居られるね。なんか陰口とか言われないの?」
ずっと親友として付き合っている私が言うのもなんだが、公爵が子爵と仲がいいのは不味いのではないか?
「そんなの関係ありません。だってわたくし、ミサキちゃんのこと好きですし」
「私も好きだよ。だって親友だし、当たり前でしょ?」
「ううん。好きってそういう意味じゃなくって、異性として好きってことですよ」
「あっ、そうなんだ。へぇ~、今なんて?」
今彼女から異性って言葉が聞こえたような?
「異性ってどういう意味? フェイランちゃんって女の子じゃん。女の子同士だと付き合えないよ。だって私そういうのに興味ないし。もしかして私のことを男だと思ってるの? さすがのフェイランちゃんでも怒るよ」
「……これを見てくれますか?」
彼女はその場で立ち上がり、スカートのすそを掴んだ。そして少し顔を赤くしながらたくし上げ、その中の物を私に見せる。
そこには大層ご立派なものがあった。
「ほわあああああああ! ろっ、ロンギヌス!」
これは、私のお父さんのよりもデカいのではないか!? なぜ彼女? にそんなものが付いているのだ!?
もしかして彼女は……
「というわけでミサキちゃん。わたくしと――いやっ、僕と結婚を前提に付き合ってくれますか?」
「あっ、はい」
こうして私に公爵令息の素敵な婚約者ができた。
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