ひいおばあちゃんからの遺言
私と同じように恋愛に全く興味がなかった曾祖母のエピソードです。自由に生きることが難しかった時代、彼女は常に前向きで人生を楽しんでいたそうです。
「ねえ、おばあちゃん。今までで一番楽しかったことってなに?」
「そりゃあ、あんたが生んだ子供達の世話をしている今だよ。孫は可愛いって言うけど、まさかひ孫を抱けるなんてね。長生きはするもんだ」
「ねえ、今までで一番腹が立ったことってなに?」
「色々あるね。意地の悪い姑に端切れ渡されて、一晩で着物を縫えって言われて時とか。あんたの母さんが、小学校で父なし子だって泣かされて帰ってきた時とか。あんまり腹が立って学校に乗り込んだら余計に泣かれてね。もう恥ずかしくって外に出れないって」
「ねえ、一番悲しかったことってなに?」
「もちろん、あんたの母さんに死なれたことさ。本当にあの娘が私の生きがいだったから。病院で少しずつやせ細っていくあの子を見るのは辛かった。せめて愚痴の一つも吐いてくれれば良かったのに。あの子は我慢強かったから。あんたが妊娠したってわかってなきゃ、私も後を追ってたね」
「おばあちゃんが人生で一番に幸運だった事ってなに?」
「・・・あんたのじいさんが亡くなった事かな。ちょうど妊娠中の時でね。一応、婚家に残るって話もあったんだけどね。しきたりの多かったあの家に留まるのも、まだ幼い弟妹が沢山いる実家に戻るのも嫌でね。飛び出して腕一本で娘を育てたよ。楽しい人生だった。本当は人の死の上に成り立った幸せなんて許されないことかもしれないけどね。あんたの子供たちに伝えておいてね。一度きりの人生、誰かの思惑通りに生きるだけじゃつまんないよって。死ぬときに、楽しい人生だって心から思えるのが最高の生き方だって。どんなに変わった人生でも、あんたは子供たちを応援してあげるんだよ」
最後までお読みいただきありがとうございます。
Aセクが書いたAセク文学が読みたいとリクエストを貰ったのでストックから出しました。
6月はLGBTQA+PRIDE月間なので丁度良いかなと思い。
Aセクシャルについて知りたいという方がいましたら、リクエストいただければエッセイ書きます。
( ..)φカキカキ
誤字脱字を教えていただけると助かります。
感想やコメントを頂けると涙を流して喜びます。
仏壇に報告します(笑)
それでは次作でお会いできるのを楽しみにしております。