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Scene08: 小説『僕と姉』のあらすじ

 猫渕珠子ことナオヤが書いたポルノ小説『僕と姉』の内容は、おおむねこうである。


 主人公は〝サトル〟という名前の中学2年生の男子。彼の視点で文章が構成されている。出だしは、夏休みの日の夕方、サトルがサッカー部の練習から自宅に帰ってきたところからスタート。


 サトルは日課となっていた風呂掃除のついでに、部活でかいた汗を洗い流そうと思い立ち、そのまま少し早めのお風呂に入ることにして、浴槽よくそうにお湯を張り出す。脱衣場だついばで服を脱ぎ。浴槽をお湯が満たすのを待つ間に、体を洗い、そして満たしきったところで湯船ゆぶねに浸かった。するとそこで脱衣場に入ってくる者がいた。


「だ、誰!? 僕が今入ってるんだけど!?」


「なんであんたがこんな時間にお風呂入ってるの」


 浴室のりガラス越しに見える制服ブレザーの立ち姿と声で、その人物が高校2年生の姉〝ハツキ〟だとわかる。彼女は塾の夏期講習を終えて帰宅して来たところで、その途中、夕立ゆうだちに降られて全身びしょぬれだった。


「私が先使うから今すぐ出て」


 今浴槽に浸かったばかりなのに出ろと言われたことに対して怒り、自分の無防備な姿がガラス戸一枚に守られているだけの状況ということに慌て、サトルは声を荒げる。


「嫌だよ! 僕は今入ったばかりなんだから! 外出て少し待ってろよアホ!」


「あっそう。わかった」


 いつもは融通ゆうずうかない姉が素直に引き下がってくれ、サトルはホッとする。しかしいつまでも戸の開閉音が聞こえない。不審に思い見返ってみると、ハツキは脱衣場にとどまったままブレザーを脱ぎ出していた。急いで顔を振り戻し、きっと濡れた服を着替えるだけだろう、と思って出ていくのを待つ。でも、カラカラカラッ、と次に音を立てたのは、浴室の擦りガラス戸だったのである。


「な、なんで入ってくるんだよ! は、裸で!」


「シャワー浴びるからに決まってるでしょ」


 ハツキは事も無げに言い、堂々と浴室奥に進んで宣言通りシャワーを浴びはじめる。サトルはしきりに「出てけ!」と繰り返すが、姉は聞く耳持たず。


「何年か前まで一緒にお風呂入ってたんだし、今更()ずかしがらなくてもいいじゃない」


「べ、べつに恥ずかしがってねぇし!」


 条件反射的に言い返すが、サトルの動揺ははなはだしい。今更恥ずかしがるようなことでもないと姉は言うが、今更になったから恥ずかしいのだろう!、と心の中で反発。


 ハツキの体つきは成熟しかけの大人の女性のものだった。いかに姉とは言え、多感な時期の男子にとっては目の毒。一方、サトルは中学2年になってもまだ生えるものが生えてきていなかった。未成熟な自分の体を知られてしまうことへの恥ずかしさもある。


 サトルはすぐにでも浴室から飛び出して行きたかったが、入ったばかりと言ってしまっていたそばからの退出は不自然。出ていけば恥ずかしがっているのも丸わかり。しょうがなく、足をギュッと体へ引き寄せた体育座りの姿勢になり、姉の方を見ないようにうつむきながらシャワーを浴び終えて出ていくのを待つことにした。


 そうして、お湯の出る音が止まるのを聞き届け、これでようやく気詰きづまりな状況から解放される……と、サトルがそう思った矢先やさき、視線を下げていた水面の前方から波紋はもんが広がってきた。顔を振り仰ぐと、ハツキがバスタブをまたいでお湯に浸かる場面だった。


「シャ、シャワーだけじゃないのかよ!?」


「せっかくお湯()いてるんだから、そりゃ入るでしょ」


「入るなよ!」


「なに? あんたやっぱり恥ずかしいんだ?」


「恥ずかしくねぇし!」


「だって全然こっち見てこないじゃない」


 そう言われれば見ないわけにはいかない。対面して湯船に浸かる姉は、タオルを着用しているが、しかしそれは長い髪の毛を包むためだけに使用されているので、ひたいから下はあいかわらずの全裸だった。胸を隠そうともせずに両腕はバスタブのふちに置かれ、両脚は開き伸ばされ、身を縮めているサトルの両脇に足の指が来ていた。


 〝夏の大三角〟のようなホクロが顔に点々々と付いているハツキの顔。その顔がいたずらっぽい笑みをたたえ、お湯の中に沈む自分の胸に目を落とす。


「昔と比べてけっこうおっきくなってるでしょ?」


「し、知らないよ!」


「さわってみる?」


「いいって!」


「恥ずかしいんだ」


「恥ずかしくねぇし!」


 ……と、サトルが手を伸ばして胸をさわったことが発端ほったんとなり、その後、姉と弟が互いにペッティングし合うような流れに発展。そして、姉のハツキに「れてみたい?」と誘われるかたちで〝本番〟へと突入し、風呂場内で行き着くところまで行ってしまい、結末を迎える。

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