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会社の怪談 堺遍

作者: 蟷螂

実話です。

当時、わたしは堺の事務所で働いていた。事務所は築10年の比較的新しいものであったが、ひとつの噂があった。


出る、というのである。


先輩からいろいろ聞かされてビビってしまった。たとえばこんな話。



事務所の宿直室で先輩が寝ていると、夜中に廊下から足音が聞こえてきた。


パタパタ、と


先輩は、「あれ、今日夜間の仕事ってあったっけ?」と寝ぼけながら考えていた。


さらに足音が近づいてくる。


突如、身体が硬直する。力を入れてもまるで動かない。金縛りである。


ヤバい、あれはヤバい。


足音は宿直室の前でパタリ、と足音がやんだ。



ひぃぃぃっ!!


恐怖心が最大値を示したその時、ようやく身体の自由が戻り、安心する先輩。


ふと隣で寝ている相棒を見ると呑気にいびきをかきながら寝ていた。


なんかムカつく


翌日、隣の部署の役職に夜間の仕事が入っていたのか、と質問したのだが夜間に仕事の予定などなかったという。


では、あの足音は何だったのか?



という話を翌日疲れ顔の先輩から聞かされた。その後も先輩経由で会議室に小さいおじさんを見た人がいる、とか、また宿直室で金縛りにあったとか聞かされているうちに、ヘタレのわたしはビビってしまった。


わたしも当直業務をしていたので、夜中に物音がするたびに「心霊現象か!?」と警戒してしまい、ただでさえ寝れない環境のなか、精神的にちょっとだけしんどくなってしまったのである。



そしてこの話を当時友人であったスピリチュアル系の教祖に話したのである。 


教祖はそれを祓っても良いが、さすがにタダでは受けられないといわれたので、ケチなわたしは上司と相談します、と話はそこで終わってしまった。



それから半年経った。再度、件の教祖宅でグダグダしていると、教祖がもう出てこないだろ?と聞いてきた。


何の話?と問い返すと君が困っていたから建物に取り憑いていたモノを祓ったんだけど、と言われた。



確かに、言われてみると彼に話した以降、出たという話はピタッとなくなった。話が出てこないのですっかり忘れていたのである。


教祖曰く、事務所が建つ以前に大きな木があって、そこに住み着いていた小さいおじさんが事務所を彷徨っていたのだという。(後日確認したら確かに大きな木があったという)これを彼が祓ったのだという。


さて、ここで不思議なのは、わたしは教祖に小さいおじさんの話は言わなかったし、また事務所の誰にも教祖のことは話していなかったのである。なのに祓われたと証明された、不思議なこともあるものだ。



それから数年後、この話を新しく赴任してきたマネージャーに不思議な話がこの事務所にあったんですよと話した。


するとマネージャーは、「いや、そこにいるけど」と言うのだ。



いや、いるって何が? 何がいたんですか?


曰く、自分たちの隣の部署におじさんがずっと立っているのだという。たまに廊下をスーッと動いているのだと言う。でも悪さはしないから大丈夫だと。


いや、それ大丈夫じゃねえし。怖いよ。



わたしは上記の怪談を作り話ではないかと疑った時期もあった。出た、という話は先輩からだったので、先輩がわたしをからかったのではないか、と。


しかし、教祖が祓った後、別の人もそういや最近出たという話聞かなくなったな、と言っていたし、10年後その先輩も酔っぱらいながら、あの宿直の話はやはり祟りとかそういうものではないかと思うのだという。



というのも、あの時宿直室で一緒に寝ていた相棒は翌日脳卒中で倒れた、のだから。



ただ、わたしはその後堺の事務所を離れたので出る話がどうなったかは知らない。

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