名付けと恋
次に俺が目を覚ました時、リリアーナと名乗った少女は、まだ眠っていた。この間に罠を回収して、バっグに入っていた干し肉を一切れ食べる。そして、これからのことに想いを馳せていると、ようやくリリアーナが目を覚ました。やはり、まだ現実を受け止め切れていないのだろう。これは夢だとうわ言のように呟き続けている。そんな彼女の肩を掴み何回かゆする。しかし、現実に帰ってきていただけない。ここは多少強引にでも帰ってきてもらうか。
「リリアーナさん、これは夢ではありません!」
「!あなた、何思い出させてくれてるの。私をこっちの世界に連れて来ないで。それともなに?私に殺されたいと、そう言うこと?」
そもそも俺は、この人がいなければ、どのみち死ぬ。だったら、現実に連れてきて説得した方が生き残る確率は上がる。
「あなた、寝る前に言ったことを覚えていますか?」
「ビーストt…」
「いえ、名前云々の方です。」
「え?」
あ、これ完全に忘れてるな。
「仰っていましたよね?『私に名前をつけて、話し相手になって』と。」
「言ったけど…言ったけど知り合いのいない世界なんか生きてて価値ないし…」
うーむ。ここは一つ、ラノベで読んだヒロインを落とした言葉から一つ、まあ、どうせ俺みたいなのが言っても落とせないだろうけど、元気付けるくらいならできるだろう。
「あなたを知る人がいなくても、俺がそばにいて、君を覚えています。だから、ここで立ち止まってないで、先に進みましょう。」
さあ、少しは元気出たかな?
「好き、一生ついていきます。」
⁉︎落ちちゃった…ま、まあ結果オーライってことで…
「それで、私に何ていう名前をつけるの?」
俺は、リリアーナが起きるまでずっと悩んでいた名前を言った。
「_『陽菜』と、そう呼ぶことにします。俺の国の言葉で『陽』は明るいものを、『菜』は花を表しています。」
「めっちゃ良いじゃん!早く《名付け》をして。」
意味は理解してるっぽいけど、この軽さ大丈夫なのか?まあ、いっか。
「神の見たまう今この場にて、汝の名を『陽菜』と改名することを宣言する!」
「はい。」
そうして俺たちの間を精霊が飛び回り名付けの成功を祝福する。
「では、これからはここに帰ってくる事はありませんので、別れの挨拶などがあればどうぞ。」
「そうだね。でもここにはあまり思い出はないからいいよ。で、聞いてなかったんだけど君の名前は?あと、もう敬語は使わないで。約束ね!」
「はい…いや、おう!俺は、七海裕也といいm…七海裕也だ。よろしくな、ヒナ。」
「よろしくね。ゆうや君。」