お前らなんかもう怖くね、えぇ…
上の層との行き来を楽にするためにもまずはトレントをたくさん狩ろう。でも、あれがあの層から居なくなるとさすがに生態系が崩れそうだから、絶滅しない程度にしないとな。毎日トレント狩りをしつつ、水や肉や木の実を集めてその日暮らしをする。まるで、縄文時代だな。とはいえ、縄文時代とは違って、毎日肉は逃げずに襲ってくるから食えない日がくることは、おそらくきっと多分ない、と信じたい。ま,まあとりあえずそれは食えなくなったら考えるとして,まずは上の層のトレントの安全な踏破方法を考えるか……あそこに奴らがいると俺らは上の層との行き来の度に追い払わなきゃならない。トレントの弱点は間違いなく火だろう。でもなぁ、恭介も燃え移ったら危ない、酸欠で死ぬ、みたいな理由で二層では火属性魔術使ってなかったからなぁ。どうしよう?
いや待てよ?森に燃え移ったら危ないだけで、気をつけさえすれば、火を使うのもありじゃないか?松明を使えばいいのでは?よし、少し試してみるか。
「ヒナ、俺、一個試してみたいことがあるんだけど…」
「何をするの?」
「あそこの巣へ行くときに、松明を使ってみようと思うんだけど、」
「わかった。じゃあ、私それ試してみるね!」
「いや、ヒナには《絶望付与》があるから松明の効果かどうか分かりにくいし、俺のレベル上げも開始したいからさ。」
「わかった。」
「俺が松明を持って外に出るから、トレントが襲ってきたら、攻撃して。」
「うん。わかった。」
fjfjfjfj
トレントは巣にいた。しかも以前よりも増えている。前回突破したときに細切れにしたから分裂して増えた、というわけではなさそうだ。細切れになっていた数ほどは増えていないからだ。
…松明―とも少し違うか。油を塗ったわけじゃないから、木の棒に布を巻き付けて火をつけただけ。ちなみに、《溶接》を使ってるから、布がずり落ちてきて木に燃えることはない。一歩、踏み出す。トレントは、一体も襲ってこない。よし、このまま二歩、三歩、四歩トレントが少し離れていくのが見える。成功かな?そして次の確認のためにトレントの方に火を向ける。
………よし、避けたな。これで、この層と簡易拠点との行き来が簡単にできるようになる。篝火にすると、トレントが火に慣れる可能性があるから、面倒くさいけど、松明の方が良さそうだ。
「あ…」
そう考えていたところで、森の湿気プラスそもそも松明として不十分な作りだったからだろう。松明の火が消えてしまった。全身から冷や汗が出る。まずい…トレントさんたちが近づいてきた。まだ警戒してるだけみたいだけど…こうなったら、最初に言っていた作戦を変更しなきゃな。
「ヒナ!ごめん、もう入ってきていいよ!反対側まで行こう!」