【400文字作文】くちびるストロベリィ
星がキレイね、と彼女が言った。星がキレ
イなわけじゃなくて空気が綺麗なんだ、星は
いつも綺麗だけど星と僕らの間にあるものが
濁ったり淀んでいたりするんだ…と話してい
ると、僕の視界に彼女が吐く白い息が見えた。
よれよれのサラダと平凡なハンバーグを食
べ終えた僕らは、小さいけど素直な僕らの車
に乗り込み、車の中が温まるのを待っている。
彼女は車の運転は好きだけど、冷たいハンド
ルを握るのは、すごく苦手なのだ。
彼女はコートの襟を立てその上からマフラ
ーをアゴまで巻き、小刻みに震えている。ま
るでキングコングに掴まれているヒロインみ
たいだなと思いながら、金魚のように唇をす
ぼめて白い息を吐き出す彼女のホッペを右手
の親指と中指で軽く掴んだ。
彼女は唇をへの字にし、マフラーで隠した。
甘いものが欲しかった僕は、彼女のマフラー
を右手の親指と中指でずらした。彼女の唇は
マフラーと同じ色をしていた。