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前編

滅茶苦茶久しぶりの投稿になります。どうか、ごゆるりとお読みくださると嬉しいです。

ー…ああ、私は今から彼に殺されるのか。


 漠然として、彼を見た。彼は、私を見ると険しい顔をしていた。私は、そんな彼に笑いかけた。


「…初めまして、貴方が噂に聞く、桃太郎さまですね。」


 私は、にこりと笑った。



 私達、鬼族は人を襲い、浚い、そして犯すと人々に云われていた。


 しかし、鬼族は実際はそんなことはなく、ただ静かに鬼の里で人と変わりない生活をしていた。


 山で山菜を取り、海で漁をし、そして、森で狩りをして。


 ただ、時々人がこの里に来ることがあった。


 といっても、人は全て幼い子供ばかりだ。


 どうやら、私が生まれる前に、鬼族の姿を見た者達が、この里を強襲してきたことがあったらしい。


 しかし、鬼と人。力の差は歴然だった。


 それに恐れをなした者達が鬼族に人身御供として、身寄りのない子供を供物として捧げていた。


 鬼族は、人を食べたりはしないのに。


 でも、鬼族の出した条件をどうやら、歪んで受け止めたようだ。


 強襲をした者達は、鬼族の強さに恐れをなして、降参した。


 頼むから許してくれ、殺さないでくれ。


 そう言って、鬼族に懇願した。でも、何もしていない鬼族は、条件をつけて、その者達を許した。


 ならば、年に一度、供物を捧げよ。どんな微細なものでも構わない。


 そう言って、解決したと思っていた。だけど…


その年に一度の日になったとき、供物を受けとる場に行くと…



 まだ、十になるかならないかの少女が、米や野菜と共に置かれていた。


 鬼族は、供物は食べ物とお酒だと思っていたけれど、この見た目でどうやら勘違いしたらしく、人の子を差し出したようだ。


 鬼族の見た目は、人と変わりないけれど、その頭には角が映えている。私も、そうだ。


 流石に鬼族の長は困り果てて、その者たちの長に話につけに行ったけれど、


 あの少女ではご不満でしたか?それなら、今度は少年を差し出しましょう。


 そんな風に、怯えて言われてしまった。これ以上口を開けば、何を言っても駄目だと感じた鬼族の長は口を閉ざして、その場を去っていった。


 そして、供物として捧げられた少女は、怯えて泣きはらしていた。いつ食べられるのかと怯えていたのだ。


 でも長は、少女に何かするわけでもなく、そして、村に返したところでこの子がどうなるのかと考えて、鬼の里で暮らさせた。


 少女は、初めは恐怖で怯えていたけれど、私達が人と変わらないと知ると直ぐに、本来の可愛らしい笑顔に戻った。


 そして、少女が嫁にいく歳になると、長はこういった。


 お前は、このまま里に残るのも、此処を出て暮らすのも好きに決めなさい


 少女は、


 ならば、此処で暮らしたいです。私、愛する方がいます。


 そして、少女が連れてきたのは、里の鬼族の青年だった。青年と少女は、お互いに愛し合っていた。


 長は、その姿を見て、二人の為に婚礼を挙げた。


 二人は、末長く幸せに暮らしたそうだ。


 しかし、問題が残った。


 供物の問題だ。どうやら、供物を捧げる一年を年端もいかない少女少年を人身御供として、毎年置かれるのだ。


 この度に、鬼族はその者達を保護して、一定の歳まで暮らさせて、成人するときに里に残るか、里に出るかを聞く。


 ある者は、里に残ることを選択し、あるものは感謝しながら里を出る。


 長や鬼族の人達にとって、共に暮らした子供達は、自分の子と変わりない。


 しかし、ある日里から出た子供が帰ってきたのだ。


 今すぐ、この里から離れようと。


 どうやら、聞くところによるとこの里を奪おうとするためにと。


 長は鬼族を集めて、集会を開き、そして生きるためにこの里を手放すことを決めた。


 勿論、反対したものもいたが、長が説得をして、強襲される前に荷物を纏めて、とある島に住むことになった。


 その島は遥か昔に鬼族が住んでいた島だった。


 その島は、幸いにも狩りも漁もでき、家畜も育てられる環境が整っていたために鬼族は移り住んだ。


 ただ、それでも……供物の子供達は私の代まで絶え間なく続いていたけれど。


 長は、私の曾祖父だ。曾祖父は、かつて襲った村人達の長に拠点を変えたことを伝えて、供物はいいと…もう罪は流すと言った。


 しかし、それでも供物の子供達は止まず、しかも、父の代からは…食べ物だけでなく、高価な織物や珊瑚や真珠などのものまで送られてきた。


 困り果てて、送り返しても不満があるのかと言われてしまい…とりあえず、貰ったものは換金したりして島のために使っていた。


 だけど、これは罠だったようだ。


 父が飲んでいた酒に、毒が仕込まれていたのだ。


 父は、この事は絶対に鬼族に伝えるなと私に言った。言えば、鬼族は報復として、流石に村人達に危害を加えると。そんなことになれば、それを口実に、村人達は嬉々として私達を殺しに来ると。


 どうやら、曾祖父の頃から…私達を初めから鬼と言う理由で殺すつもりだったようだ。


 その事を知らされた私は、悲しみと苦しみに苛まれたが、黙るようにした。そして、父は供物として捧げられていた子供達のことを案じていた。


 子供達は、行き場もなく、そして親に捨てられた子達なのだ。そんな子達が、村人達のそんな考えを知れば、きっと……


 そして、父は数日後に死んだ。



 私が、鬼族の島の長として受け継ぎ、暫くすると…


 島に辿り着いた船に、私と変わらない年の少女がいた。


 (今日は、供物の日ではないのに…)


 供物の日は、船でこの島に流れ着くようにと子供と、様々な品を乗せてくるのだ。それを、私達鬼族が見付けて引き上げる。


 たまに供物が海に落ちるけど、子供が無事なら供物はいらないのだ。


 私は、気絶した少女を鬼族の若い衆に頼んで、私の家まで運んで貰った。


 彼女は見たところ、供物として来る子供達と違って、着物などがとても華美だった。


 そして、目を覚ますまで私は彼女の看病をした。


 目を覚ました後に、元気良く私に突っ掛かったのは、割合する。


 最初は警戒していた彼女は、私の島の現状を見て、段々と警戒を解いてくれた。今では、私と彼女は二人で家に暮らしている。


 そして、ある日彼女は私に話した。


「…妾は、そなたの所へ来る前に父上から、鬼の島へ行けと言われたのじゃ…妾は女である故、父上からしたら厄介払いだったのじゃな…しかし、それも仕方無いのじゃ…父上は、男が…跡取りが欲しかったのだからな…だからこそ、鬼の島へ行き、妾の安否などどうでも良かったのじゃ」


「父上は、鬼の里だけなく鬼の島まで欲している…そして、そなたらを皆殺しにするつもりだ…浅ましいな…我が父ながら、軽蔑する…」


「その為の口実として、妾をわざと船に乗せて鬼の島へ行くようにしたのだ…供物以外にも、今度はこの領主の姫を要求して…そして、そなたらを殺す使者を送る、理由として…」


そう言って、目を伏せて涙を浮かべた彼女は、私には頭を下げた。


「…すまなかった…我が父とはいえ、そなたらにそのような事を差し向けていたのは、妾の…厳密に言えば、妾の先祖代からのせいだ…そなたらに供物を捧げていた村の者達は、そなたらの曾祖父の終わりの時代からそなたらのことを分かっていたのだ。しかし、当時の領主が村の長を脅し、供物と子を捧げるように強要してきたのだ」


「何代にも渡って、村の長は止めていたのだ…しかし、浅ましき妾の先祖は、そなたらの土地を奪うだけでは物足りず、今度はそなたらの島まで奪おうとしている…酒の毒は、恐らく…妾の祖父のせいだ…大方、毒を仕込んでそなたらの報復を煽って村人達を襲わせるためだろうな…そして、正当な理由として殺すつもりだったのだろうさ…」


「…全てが終わり次第、妾の首はそなたらに捧げる…」


 真実を知った私は、彼女の自嘲した顔と伏せたとき見せた悲しげな涙を見た。


「一つ、お聞きしたいのですが…何故、里の皆の者は無事だったのですか?もし、それなれば…鬼族は…里で死に絶えてる筈です」


その言葉を聞いた、彼女…姫は、


「…村人の一人が、鬼の里の若者に…伝えたからだ…だからこそ、逃れられたのだ…」


 私は、姫を責めることが出来なかった。


「…姫様…私は、貴方を恨みはしません…ですが、貴方の父上や先祖は…許すことはできません…」


「…寛大なお心、感謝する…」


 姫は、また頭を下げた…。


  心の整理がつき、私なりに漸く、立ち直れた。


 姫は、暫くは私に申し訳なさそうにしていたが、月日が経つに連れて、また仲良くなれた。


 父のことや鬼族のこの事は、まだ、鬼族の皆には伏せておくと決めた。今話しても、きっといらない混乱を招くから。


 ただ、曾祖父の頃からの村の人達は、私達のことを殺すつもりでなかったことは分かった。それだけは、私の救いになった。


 彼等なりに、私達を気にかけてくれてたのだ…ただ、権力者のせいで…不幸な目に合わされていただけで…。


 私は、村人達といつか、和解が出来ると心から信じたいと思ったのだ…。


 それが、私が死ぬことになっても。


 目の前の、青年は私に問い掛ける


「貴方が、鬼ヶ島の長…紅姫であるか?」


 その問いに、頷いて…


「はい、私が紅姫です…」


 険しくなる、彼の美しい顔を見て…鬼族の最後の長になるだろう、私は彼に名を言ったのだった……。



 

 

 

はい、というわけで前編です。…桃太郎、ヒーローなのに影が…後編から、巻き返して来ると思いますので!!なにとぞ、なにとぞよろしくお願いします!!


それにしても、本当に久しぶりに投稿しました…ちょっと、いろいろありましたが…後編は、早めに投稿します。よろしくお願いします。

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