それからそれから
会いたい。だけど、あの子の事を考えてしまったら二度と会えなくなる。ものすごいジレンマだ。
『考えるな。とは言ってないよ。ただ考えすぎると飲まれてこっちの世界との癒着が強くなってしまう。そうなると、”あの子“がこっちの世界に来て君を助け出したとき”あの子“がこっちの世界に取り込まれてしまうことになる。それだけは絶対に避けなくてはならない。本当の意味で君の心のなかで生きることになってしまうからね。少し見てきたけど、彼女には兄がいるんだよね?君に未来がないわけではないけど、”あの子“の未来を君に潰させたくないんだ。』
「あの子を取り込めたら、君だけのものにできるんだよ?それに、ここは君の心の世界。つまり取り込んだ後、彼女が助けを求められるのも君だけだ。こんな嬉しいことは他にないだろう?」
だ、誰だ!
「言っただろう?ここは君の心の世界だって。つまり君の心のなかにいる悪の想いと善の想いが君に干渉できるんだよ。いつもは理性の壁で表に出れないけどこんな好機逃すわけにはいかねえじゃん?」
じ、じゃあ善意の俺もいるってことだよな?なら…
「ざんねーん善は俺が既に監禁済みだ。」
おいおい監禁までする必要ないだろ?両方俺の心なんだから解放しろ。
「へいへーい。君の命令は俺らにとっちゃあ絶対なんだ。気安く命令すんなよ?」
わかったよ。そういえば、お前達に名前はあるのかい?無いと呼びにくいんだけど。
「名前なんてない。所詮君の中の想いにすぎないからね。」
じゃあ、君らに名前を付けてあげるよ!どんなのがいいかな。うーん…あっ今のうちに善意を解放しておいてくれ。
「へーい」
名前か。どんなのがいいかな…。彼らの想い、正確には俺の中の想いに関係した名前がいいな。善と悪…善の方は良心から取ってリョウでもいいけど、悪の方が思いつかないんだよね。悪、あく…
「我をそんなに呼ぶな。1度で十分だ。」
あっいや、考えてただけで別に呼んだわけじゃ…
「あーそうかよ。まあそれはいいとして、連れてきてやったぞ。感謝しろよな?」
あっうん。ありがとう
『それより貴様、どういうつもりだ。僕を閉じ込めて!』
「だーかーらーお前も感じた通り我らの主様がこの世界に落ちてきたのだ。これは好機と思い、閉じ込めたまでだ。」
『では何故僕を解放した!』
「主様の命令だからだ。我は解放するつもりは毛頭なかったのだが、主様の命令とあっては解放せざるを得まい。貴様とて主様に逆らえないのは同じだろう」
喧嘩は止めてくれ。俺はどちらの味方でもましてや敵でもない。その時の1番強い想いを優先する。
『主様はサマエルなのだな。』
サマエル……確か純粋な悪でも純粋な善でもなく、状況によって異なる天使の名前だったか?
『さすが我が主様。なんでも知ってますね、というより主様が知ってるから僕らの知識となっているんですが。』
神の名前……!名前が思いついたぞ!悪はサタン、善はルシファーにしよう。
「サタン……いい名前です。さすが主様」
『ルシファーですか…』
なにか不満か?
『確かサタンとルシファーは同一人物……同一神ですよね、何故こんなやつと同じ神の名前をお付けになったのですか?』
ルシファーはサタンが闇に落ちる前の名前でルシファー=大天使、サタン=悪魔の長として書かれていてサタンが1番強い悪魔とされている。1番強い悪魔の闇落ち前が弱いはずもないだろう?それに、君らは俺の中で悪と善として相対してはいるが俺の中にいる限り2人は1つと言っても過言ではないだろう?
『悪い気はしないけど……まあ、主様がお決めになったことだから異論はありません。』
よし、お前らは今からサタンとルシファーな。