後悔と諦め
俺はあれから体感で少し、実際は30分程度魂が抜けたように放心していた。久しぶりに寂しさを感じて泣いたら、まさかその泣き顔を他人に見られるという羞恥にココロが砕けそうになった。それも独り寂しげに泣いていたのだ。どう思われたか大体見当がつくし、もしも次会うようなことがあれば俺のココロは跡形も残らず砕け散ってしまいそうだ。
「もう9時か…………ん?9時?まずい!もうすぐ食器を回収に看護師がやって来る。」
回収に来て、もし食べ終わってなかった時前のような呆れたような顔で見られたときには俺は消えてなくなりたくなるほどの申し訳なさでしゃべれなくなりそうだ。
「よし食べよう」
冷めきったご飯はとても美味しいとは言えないような味だった───
コンコンッ
食べ終わって一息ついていると俺の病室にノックの音が響いた。
おじいちゃん達かな?それにしては礼儀正しく声をかけるまで待っていて不自然だし、早すぎる気もする。少し嫌な予感もするな。
「どうぞ」
短く答えたが、入ってきた人物に俺は唖然とした。俺が先ほど醜態をさらした女の子とそのお母さんらしき人物がそこにいたから。
女の子が恥ずかしそうに少し後ろに隠れているが隠れたいのはこちらの方だ。しかし、他人の前でもじもじするのはおかしいと思ったので堂々としていようと思った。すると母親の方が先に口を開いた。
「さっきはうちの娘がいきなり入って来てしまってごめんなさい。この子のお兄ちゃんが昨日隣に入院したのだけれど、お兄ちゃんが心配だからって一人で病室まで先にいってしまったの。でも、勘違いしてあなたの部屋に勢いよく入って泣かせてしまったってさっきまで心配してたのよ。」
「別に娘さんのせいじゃないです。その時たまたま頭痛がひどくて。」
「あら、泣くほど痛いって………今はもう大丈夫なの?」
「はい、今は全然平気です。こんなのよくあることなので。」
「そう、ならいいのだけれど。良かったわね、もうでもいきなり人の部屋に入っちゃダメだからね」
「はーい。ごめんなさい。」
「うん。俺もビックリしたけど怒ってはないから。」
「良かったね」
ブーッブーッブーッ
「電話……誰からかしら。めぐ、お母さん電話するのに外でるけどどうする?」
「ちょっとお話ししたい。良い?」
「俺は構わないけど。」
「そう?じゃあこの子をちょっとよろしくね」
そういうと急いで部屋を出ていった。よっぽど大事な相手なのだろう。
一瞬の沈黙。
「えっとね、話っていうのは………さっきは本当にごめんなさい。お兄ちゃんが心配で………」
「俺も別に怒ってる訳じゃないしもうその話はいいよ。それで、話っていうのはそれが言いたかっただけ?」
「え、えーとね。お、お友だちに…私のお友だちになってほしいの。」
「何でまた急に俺なんかと?」
「この部屋の空気がどこよりも重かったから。特にあなたの周りが。」
一瞬部屋の空気が変わった。この子は何者なのだろうか。
「それが理由?そんな理由が友達になりたい理由ねえ。まあ、いいよ」
「えっホントに?」
「嘘をつく必要ないだろ」
「それはそうだけど……えーとじゃあ、君の名前は?」
「鷹野博樹。君は?」
「水野めぐみだよ。よろしくね博樹君」
「いきなり名前呼びか。まあ良いけど。」
「あっ先に言わなきゃいけないことがあるの」
「なんだ?」
「私結構失礼なこと言っちゃうと思う」
うん。知ってる。
いきなりドアを開けてきたときから礼儀知らずだなと思っていたが、かわいそうなので言わないでおいた。