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1.第一次大戦終結! バルチック艦隊の壊滅と革命、そして大日本帝国の栄光!

 ロシアの誇る二十世紀の無敵艦隊アルマダ――その名も「バルチック艦隊」は日本海沖の海戦により壊滅的な被害を被った。ときに1914年、涙も凍る12月の出来事である。


 帝政ロシアにとって致命的だったのは、単に日本帝国海軍に手痛い敗北を喫したという事実そのものではない。むしろこの敗戦を機に、海兵たちの間に反体制的気運が高まり、とある危険な思想が「革命」として結実したことのほうが、国家にとってよっぽど大きな事件だったのである。

 

 「革命」を惹起した危険思想の名は――共産主義。


 哲学者マルクスおよびその協力者エンゲルスが生み出した妖怪が、ノヴゴロド公の痩せこけた末裔……農民、労働者プロレタリア、うだつのあがらない知識人インテリゲンツィアたち……に、闘志を、決意を、革命の勇気を、支配階級への怒りを、与えたのである。


 果たして白帝ニコライは引きずり降ろされ、各地には革命政権が誕生した。既得権益を守るべく最後まで赤軍に抵抗を続けた英雄コルシューノフ将軍率いる白衛軍と、騎兵グリゴーリー・パンテレーエフの指揮するドン・コサック反乱軍もついには壊滅。ドン地方を含めたロシア全土に非常委員会チェカーと懲罰隊、そして無慈悲な革命裁判が氾濫した。立憲民主党カデットの将校はみな銃殺刑。若者たちの鮮血が、ロシアの大地を赤く染め上げた。


 さらに――。


 ――農村のペチカは破壊され、倉からは強制的に食糧が運び出された。


 ――都市にはパンが不足し、多くの労働者プロレタリアが貧苦にあえいだ。


 ――知識人インテリゲンツィアのペンはむなしく原稿を滑り、上っ面だけのアジテーションに終始した。


 白から赤へと政権が移り変わり、半ば自動的に第一次大戦は終結。


 それは本来なら、誰もが心から望んでいた「平和」をもたらすはずだったが――。

 

 皮肉にも「革命」は、ロシアに厳しい冬の季節を運んできたのであった。


 *


 さて、戦勝国の日本はと言うと――。


 歴史上類を見ない好景気に、みなが浮かれていた。


 なにせ新たに獲得した植民地から、莫大な収入が流れ込んできたのである。第一次大戦中に獲得したのは、青島チンタオ、遼東半島、樺太、シベリアの端っこ、台湾、朝鮮……など。国民は未来を楽観視し、食えや飲めやの大騒ぎ。歓楽街が発展し、都市は賑わいを見せた。遊郭は豪奢を極め、多数の賓客を呼び込んだ。この時期にいくつもの傑作遊郭文学が現れたのは、その証左である。


 奇妙なカルト的運動のようなものが出現したのもこの時期だ。それは「ほら、明るくなったろう」と言いながら札束をランプ代わりに燃やす退廃的遊戯で、その時期の一部の腐敗した富裕層にはかなり流行った。


 それでも決して忘れてはならないのは、大多数の帝国臣民が「勝って兜の緒を締めよ」の格言を胸に刻み、版図のさらなる拡大とアジア圏の永劫平和を希求していた事実である。彼らは真面目に働いた。よく勉強した。議論もした。

 

 一言でいうなら、列強大日本帝国は「だいたいうまくいっていた」。すべては非白人国家の繁栄、それから、平和のために――。


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