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【リクエストep】if-由莉の物語

 めがわるいあきらさんからのリクエストepです!

 ________________


 これは……由莉のあったかもしれない未来

 その一つをこれから描こうと思う。

 ________________



「こほっ、こほっ……ううぅ……っ」


 再三に渡る母親からの虐待に由莉の身体はいよいよ限界を迎えていた。最近、血をよく吐くようになり、たまに意識がなくなるようになって確実に死が近づいているのが分かった。


「いやだ。死ぬのは……絶対いやだ……っ、何があっても……」


 ここにいたら……いや、次にお母さんからの虐待を受ければ……死ぬ。由莉はそう直感していた。


「逃げ……る…………?でも、私に行く所なんて…………」


 逃げようにも由莉にはここ以外に居場所は一つもない。以前に外へ出ようと試みた時、母親に見つかって意識を失うまで殴られてから外へ出るのが怖くなり、それっきり外部との交流の一切をしていなかったのだ。


(どうしよう……逃げても……もう…………っ)


 このまま死を待つなんていやだ。どうせ死んじゃうならお母さんをその前に……とは思っていたが、母親を殺す力が無いことくらい自分でも分かっていた。



 ・ここまま待って殺されるか


 ・行く宛がなくても一か八か逃げるか


 ・命を賭けて母親を殺そうとするか



 この3つに由莉の行動は絞られていた。


(このまま殺されるなんて……いやだ。でも、お母さんを殺そうとしても……殺せる気がしない……っ。だったらもう…………選択肢なんて一つしか……)


 覚えている限り4年半、虐待に耐え続けた由莉はもう今の状況を耐え抜く体力が残っていなかった。


「逃げなきゃ……もう、これ以上…………耐えられない……」


 生きることを諦めるわけにはいかなかった。生きなければならなかった。由莉はフラフラの身体を何とか持ち上げ玄関まで行きドアを開けると___一面の銀世界が由莉の視界には写った。

 今日は12月後半、暖冬冷夏と言われ続けてきたその頃だったが、その日は前日から珍しく大雪が降った。雪があればそり滑り、雪合戦、かまくら作り色んな事をしたいと思う人も多いだろう。

 だが……今の由莉には真っ白い雪がまるで刃のような銀色に見えた。体温を刻刻と奪う寒さ、足を貫く激痛。……家を出るにはあまりにも過酷な状況だった。


 それなのに__由莉は外へ足を踏み入れた。どう考えても、誰が見ても愚行としか思えない。しかし、逃げることへの焦り、虐待による精神の衰弱、生きる事への執着心が由莉をこの行為へと至らしめてしまった。


 一歩、また一歩、歩く度に雪が白い肌を針のように突き刺した。だが、度重なる虐待で痛みの感覚が麻痺し足の痛みが全く分からなかった。ただ感じるのは寒さと…………猛烈な眠気。

 そもそも立つのがやっとな由莉が歩いていられること自体、奇跡に近かった。そして、こんな死にに行くようなこと長く続くわけも無く……家を出てわずか5分、由莉はつんのめって雪に顔面から着地し、それから起き上がることが出来なくなってしまった。


(逃げ……なきゃ……でも、もう…………身体がもう言うこと聞いてくれない)


 ……どうしてこうなったんだろ


 ……なにも悪いことしてないのに……


 ……なんで、普通に生きるのがダメだったの?


 水分の全てが凍りつくような空気の中で一筋の涙が頬を流れた。もう何年ぶりに流した涙か分からなかった。


 ……ぁ、ねむたくなってきた……これが死ぬって事なのかな……少し寂しい気がするけど……もう、精一杯生きたよね。……もし、生まれ変わりがあるなら、次は普通に生きられたらいいなぁ……


 溢れんばかりの涙を流す由莉はその意識をゆっくりと閉じていき、その中で最後に聞いたのは……



 遠くからうっすら聞こえる車のモーター音だった

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