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【リクエストep】Yuriとgiay


 これは由莉が引きこもりだった頃の話____



「ふんふんふ〜ん♪」



 由莉は鼻歌を歌いながら流れ作業のように画面上のスコープに写る敵を次々と撃ち殺していた。



「えっと……これで29キル……次で連続3000キルかぁ……」



 由莉にとってノーデスでの連続キルは一つの目標だった。もうかんたんに1位を取れてしまうから少し由莉自身で決めたのだ。



「皆んなもう少し見つからないように行動しないと……」



 由莉は撃った場所がバレないように場所を変えるために少し移動しよう。そう思った時だった。



「次が3000キルかぁ……まぁ、誰でもいいけ___!?」



 感性がやばいと察知し、由莉は急いで咄嗟に後ろに飛び退いた。すると由莉がいた場所に銃弾の嵐が降りそそいだ。



「あっぶない……っ。でも、おかしいなぁ……大体は何となく分かるのに、直前まで全く分からなかった……この人、強いのかも……っ、ふふっ、面白くなってきたよ!」



 由莉はかつてないほど燃えた。やっと……数ヶ月ぶりに強い人と……戦える!由莉は自分の全神経を自分の両腕と10本の指に込めた。どうしよう、身体の震えが止まらない……!ふぅ〜、よしやろう!


 _____________



 そこからの記憶はかなり曖昧だった。理性が働かず本能のままに自分の愛銃で壁ごと敵を撃とうとしたが、その度に避けられる。悔しかったが、同時に嬉しくもあった。もう自分でもよく分からないくらいキーとマウスを動かしていた。なのに全然キルできない。



「っと!」



 空いた壁の穴を利用してカウンターを仕掛けてきたから再び後ろに飛んだ。やばい……っ!この人、私より強いかも……!呼吸をするのを忘れていたせいか息があがってきた。けど、一瞬気を抜けば……死ぬ。



 場所を悟らせちゃだめ、相手の裏をかくんだ。

 相手にスキを見せたら終わり、スキを与える間を与えたらだめ。そして…………………






 絶対に____殺す!!





 _______________



「はぁ、はぁ……はぁ…………っ!」



 由莉がはっきりと意識を持てたのは戦闘が終わった瞬間だった。息を止めすぎて過呼吸を起こしそうなくらい息を吸って吐いてを繰り返した。



「あ……れ……?終わってる……結果は……?」



 由莉は急いでリザルト画面で自分の戦績を確認した。結果は____





 30キル 【1】デス




「___負け……た…………」



 由莉はそのまま仰向けで地に倒れ伏した。こんなに頑張って……それでも負けるなんて何時ぶりだろう……悔しかった。涙が出るくらい悔しかったよ………っ!



「それにしても誰だろう……プレイヤーネームは……『giay』?聞いたことないや……英単語でも見た事ない……」



 由莉は興味本位でその単語をネットで調べてみた。すると___



(giayって英語じゃなくてベトナム語なんだ。意味は___『靴』……?ふふっ、おかしな名前の人)



 由莉は思わず笑いがこみ上げてきた。もう今日で4徹入ってるからか異常にテンションが高かった。



 面白かったよ〜!あっ、そう言えばあの時29キルだったから30キル1デスって事は……相打ち……かぁ…………次会った時は絶対に勝つよ!……ん?あの人からメールが来てる……何だろう……





 また会いましょう





 たった一言だったが、その言葉に由莉は惹き込まれた。むしろ清々しい気分だった。由莉は思わず返信を送ろうとキーボードに触れようとしたが、その直前で手が止まってしまった。



(ごめん……ね。リプ送りたいけど……)



 多少の戸惑いこそすれど、書くのをやめ、またその人と戦う時の光景に思いを馳せた。

 すると、その行為をぶち壊すかのように怒り狂った音ともに部屋に近づく一人の足音が聞こえてきた。



 また、始まるんだ……ね。でも、絶対に死んだりなんかしない。抵抗しても私に勝ち目なんてない。なら、抵抗せずに痛いのだけ守るように受け流せばいいんだ……。でも、本当に死ぬ時はただ死ぬつもりはないよ。その時はお母さんを意地でも____







 殺してやる









 _____________________



 そしてそこから4ヶ月、由莉はずっと待っていたがその「giay」はそれきり姿を見せることはなかった。



 嘘つき……もう1回戦いたかったのに……



 由莉が全力で戦って、ありとあらゆる神経をその戦いに全てをかけたのに___それでやっと引き分けだった『初めて』のプレイヤー。二度と忘れられないくらい強いと由莉が初めて思ったプレイヤー。



(また、会いたいなぁ……もう、あれからあんなに強いプレイヤーと当たってないから退屈だよ……)



「うーーん、今日はもう寝よっかな……久しぶりの2徹だから少し疲れちゃった、ふわぁぁ……」



 ランキング戦が始まって3日、私は1位を走っているよ。2位と倍くらい差をつけて……ね。今回勝っちゃったら……12連覇になるんだっけ……頑張らないとね……



「起きたらまた頑張ろう……ね……………………ん?」



 気を抜いた瞬間に溜まっていた疲労が一気に溢れ、そのまま床で意識が微睡まどろんで、いよいよ寝ようとしていたその時、「ピロンっ」とメールが届く音が目を閉じていた由莉の耳に聞こえた。





 これが由莉と自身が絶対忘れることの出来ないある一人のプレイヤーのお話。




__________________


【お知らせ❗】


現在、絶賛リクエスト募集中です!由莉のこんな話がみたい!という方はぜひ気軽に返信してください!出来そうな範囲で行います。

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