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ゆりスナ! 〜引きこもりの少女はスナイパーを目指します!〜  作者: ミカサ
第3章 はじめての依頼
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由莉と前日

 ___明日、私は人を殺す……



 由莉は部屋に入ると汗でびっしょりになったジャージを脱ぐとカゴの中へ投げ込みそのままベットに倒れこんだ。



(私は明日、人殺しをする。悪い人をこの世から消すと言ったら聞こえはいいかもしれないけど殺すって事実には変わりない……けど、標的が悪い人で良かった……殺すのを躊躇う理由もないし、ね)



 由莉は自分の右手を眺めた。日に当たらない生活をしてきたから白い手だ。この手を私は人の血で染める……けど、それがスナイパーの仕事だから……私は殺るんだ。



 その頃には日もだいぶ傾いて夕焼けが始まったばかりだった。……まだ寝るには少し早いかな……?よしっ、もう一度依頼内容を確認しよっと。



「日時は明日、夕方6時頃。夜だと発砲炎見えちゃうからこの時間がいいのかな……?目標までの距離約1000の10mの打ち下ろし……うん、風があっても絶対に当てられる。それで、依頼内容が部屋の中にいる標的2人の狙撃。壁がコンクリートで出来てるみたいだから、それを利用して……あの子の弾でコンクリートを粉砕しつつ1人は仕留めて……もう1人は飛び散ったコンクリート片で……消す。最悪の場合は2回撃たなくちゃいけない……けど、多分その状況になったら……。ううん、やっぱり1発で仕留めなくちゃ。後は……目標を達成してから逃げる経路だよね。場所が場所だからもう撃ったら急いで階段駆け下りて逃げなくちゃ……多分5階から降りることになるから……大体100段だから下まで行くのに私でも1分はかかっちゃう。そこからは車を用意してくれるってマスター言ってたから……大丈夫、上手くいく」



 由莉の頭の中では既に成功するイメージしかなかった。けど、不測の事態が発生する場合もあるからと由莉はもう少し考えることにした。



「もし撃ってから逃げるまでに敵に追いつかれたら……戦うしかないけど……うぅ、近接格闘教えてもらえばよかった……でも、落ち込んでても仕方ないよね、明日終わってからマスターにお願いしよっと。うーん……考えられる事態は……それくらいかな?持っていくものは明日準備するとして……逃げる順路も覚えたし、周辺の地図は頭の中に叩き込んだし……やることなくなっちゃった……ふあぁ……ちょっと眠たくなってきたけど……夜ご飯食べてお風呂入ってから寝ようかな……」



 そう考えていると不意に部屋のドアを叩く音がした。このノック音は……阿久津さんだ!



「由莉さん、夕食持ってきましたよ。入ってもいいですか?」



「はいっ!どうぞ……ってひゃあ!?」



 ドアを開けようとした由莉は自分の今の格好を見て飛び上がった。今開けられたらダメだよっ!ジャージ脱いでそのままにしてたんだった!こんな姿見られるの絶対にいや……っ!



「……?どうしましたか?」



 不思議そうに阿久津の声が聞こえてくるがそれどころじゃなかった。急いで着替えないと……!



「少し待っててくださーい!開けたら二度と阿久津さんと口聞きませんからね!」



「は、はぁ……」


 __________



「ど、どうぞ〜」



 何とか新しいジャージに着替え終わった由莉は阿久津を部屋の中に入れた。



「由莉さん、さっきはどうしたのですか?」



「っ!い、いえ!何でもないです!」



(部屋であんな格好でいたから着替えてました!なんて言えるわけがないよ……)



「そうですか……何があったのかわかりませんがこれまでにしましょう。」



 阿久津は机の上に持ってきたおぼんから器をいくつか置いた。今日は少しあっさりした物がいいなぁ……と思っていた由莉だったが、阿久津はそれを読んでいたのだろう。レタスの上に玉ねぎと茹でられた豚肉が載せられその上からドレッシングがかかった料理とあったかいご飯、白味噌を使ったお味噌汁が置かれていた。



「うわぁ〜美味しそうですっ」



「豚しゃぶサラダを作ってみました。今日は少し熱かったですし、ひんやりした物が食べたいのではと思っていたので」



「はい!そう思ってました!んしょっと、それじゃあいただきまーす!はむっ、んぐ……」



 由莉は椅子に座り元気な声で言うとまずは豚しゃぶサラダをドレッシングがかかった豚肉と玉ねぎを箸でつまんで食べた。しっかり冷やされていてシャリっと玉ねぎの独特の食感と豚肉の濃厚な味が口いっぱいに広がりドレッシングの程よい酸っぱさで口の中がすごくすっきりする。そこに由莉はほかほかのご飯をほうりこんだ。噛めば噛むほど甘さが染み渡っていく真っ白な米がさらに豚しゃぶサラダの味を引き立てる。

 口の中が空っぽになると次に味噌汁をすすった。具材は豆腐とワカメとシンプルだったが由莉はその組み合わせが大好きだった。白味噌特有のあっさりとした甘さと優しい味わいが味覚をつつき、ほっぺたがキュッとなった。



(阿久津さんの作る料理本当においしいなぁ……いつか私も料理……やってみたいな〜)



 そう思いながら由莉は夕食を堪能しながら完食した。お腹もふくれ大満足だった。



「ごちそうさまでした!美味しかったですっ」



「ふふ、お粗末様でした」



 由莉に心からの笑顔と感謝を言われ、阿久津も満更でもないようにはにかんでいた。すると何かを思い出したみたいに急に顔から笑顔が消えていった。



「……由莉さん、明日ですが__」



 由莉は「分かっています」と言わんばかりに首を大きく横に振った。



「阿久津さん、私は大丈夫です。信じてください」



 何となくだけど分かってた。阿久津さんは……まだ心配してるんだ。分かっていても__また私があんな風になるんじゃないか……って。



「そう……ですか。それなら一つだけ約束してください」



「はい……」



 由莉が頷くと阿久津は少ししゃがんで由莉の目線まで顔を合わせた。



「何事もなく帰ってきてください。それだけです」



「阿久津さん……それフラグって言うんですよ?けど、もちろんです。絶対に帰ってきます。」



 それを聞いた阿久津は何やら安心したように立ち上がると由莉が食べた皿を持っていこうとした。



「それを聞いて安心しました。では、おやすみなさい、由莉さん。」


「はいっ、おやすみなさい」



 阿久津が部屋から出ていくと由莉はパパっとお風呂に入ってベットに寝転がると数分で眠りの底へと落ちていったのだった___

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