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ゆりスナ! 〜引きこもりの少女はスナイパーを目指します!〜  作者: ミカサ
第3章 はじめての依頼
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由莉は意思を固めました

「それで……その依頼はどんな内容なのですか……?」



 由莉は日程、時間帯、目標までの距離、高低差、標的の特徴……今知れるだけの情報は全て知っておきたかった。



「日程は……明日だ」



「あ、明日ですか……急ですね……」



「そうだな……それは由莉にもすまないと思う。心の準備もあると言うのに」



「あっ、それは大丈夫です!いつかはやるのだと覚悟はしてました」



「そうか、それは頼もしい限りだな。今回は屋内にいる標的の狙撃だ。目標までの距離は1000。高低差は……そうだな、12m。時間帯は夕方の6時頃。」



 なるほど……色々掴めてきた。明日の天気は確か……晴れ。曇とか雨だったら湿度とか空気密度とかもう1回計算しなくちゃいけなかったけど、ひとまず良かったと由莉は胸を撫でた。

 それに1000mの狙撃なら由莉には簡単すぎることだった。……高低差も分かるなら外す要素など何も無い……はず。



「標的だが……今回は2人だ。」



「……2人ですか?」



 由莉は相当困惑した。それもそのはずだ。スナイパーは1度のショットで決めなくては意味が無い。2度目はないのだ。つまりマスターが言いたいこと、それは……



 1発で2人を狙撃しろ、という事だ。



 しかも部屋の中。そんなことが出来るとしたら……同時に2人を撃ち殺すしかない……でも、二人が射線上に重ならないといけないし、その状況が100%起きるとは言い難い。それに、もし重なったとしてもそれが1.2秒も続くとは思えないよ……だからこれはあまりにも賭けの要素が強すぎるから無しかな……としたら……どうやって……?

 考えすぎて頭がショートしそうになってる由莉にマスターはヒントを提示した。



「その銃の特性を思い出してみなさい」



 この子の……特性?えっと……12.7mmのおっきな弾を使うこと、空気抵抗が低くてまっすぐ飛びやすいこと、他の狙撃銃よりも遥かに射程が長いこと、威力がすっごい強いから人に当たったらバラバラになっちゃうこと……コンクリートも粉々に出来る威力がある……こと?

 何かが由莉の中で引っかかったのを感じた。コンクリートを粉々……?と言っても全部が砂粒くらいの細さはならないはず。豆粒くらいの大きさもあると思う。……それが、



 《《たくさん、人に飛んでいったら……?》》



 この子の威力があれば……コンクリートの壁をぶち抜いても威力が落ちるけど人を殺すくらいの力は全然残ってる。そして……多分そのコンクリート片もショットガンの粒弾みたいに部屋中に飛び散るはず。壁の側にいてくれたら……確実に消せる。

 そもそもコンクリートの壁自体仮定に過ぎなかったが、由莉には確信があった。



「マスター、建物の壁は……コンクリートですよね?」



「あぁ、そうだ。そこまで辿り着いたということは……分かったようだな」



「はい……」



 その光景を想像してしまった由莉は少し声のトーンが落ちてしまった。

 最後に『あれ』を聞かなくちゃ……じゃなきゃ……私が納得出来ないから。そこははっきりさせないと……狙撃する時変なこと考えて、もしもの事があったらダメだし……



「マスター、口を挟んですみません……その……標的達はなんで狙撃対象なのでしょうか……?」



 依頼を受けたからには必ず目標は狙撃する。それは覚悟していたけど、罪もない人を撃つのは気がかりだよ……。だから、仕事をする前に聞いておきたかった。



「簡単に言えば……そいつらは『人身売買』の集団のトップだ」



「人身……売買……」



 人身売買……その被害者は大人もいるが子供もかなり多い。そして……その先は……性奴隷、もしくは……臓器摘出。どちらにせよ確実に死ぬ。性奴隷なんて……家畜みたいに扱われてゴミのように殺される。臓器摘出も何も抗えずに殺されるんでしょ……?そんな事をするような人達に……同情なんて……する義理はないよ。絶対に……っ。





 殺そう




 由莉の意思は固まった。



「マスター、ありがとうございます。必ず依頼はやり遂げます」



 感情を表に出しすぎないように……特に殺意だけは基本は心の奥深くに秘めるように___それでも由莉の目には静かな殺意が宿っていた。

 マスターも由莉を見て覚悟を見ると少し満足したような表情になり、由莉に休むように言った。



「そうか……。今日はもう切り上げて休みなさい、由莉」



「えっ……でも……」



「いいから、休みなさい。明日は朝から準備するからな」



「……はい、わかりました」



 それ以上の抵抗は由莉はしなかった。これはマスターなりの優しさなんだ、と。私に考えをまとめる時間を与えてくれたんだと……。これ以上何かを言うのはマスターに失礼だと思った由莉は最後にバレットの手入れを終えると射撃場を出て自分の部屋へ向かうのであった_____




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