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ゆりスナ! 〜引きこもりの少女はスナイパーを目指します!〜  作者: ミカサ
第1章 人の温もりって……?
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由莉は引きこもりから卒業します

「いつか……この銃、本当に撃ってみたいなぁ……でも、そんな事、外国じゃないと出来ないし……ううん、考えるのやめよっと……うっ、また背中の傷が……っ」



 背中の痛みに由莉は顔をしかめながらマウスを素早く動かし、リザルト画面を矢印マークが疾走しまくってようやくホーム画面まで戻ってくると由莉は思いっきり背伸びをするとそのまま床に寝そべった。



「うーーん、今日はもう寝よっかな……久しぶりの2徹だから少し疲れちゃった、ふわぁぁ……」



 新しいランキングイベントが始まって3日、由莉は負けるものかと初日に2時間ほど仮眠をとってから、2・3日目とぶっ通しでプレイしていた。その結果、



 112戦 3024キル 3デス


 ランキング1位 560,560pt 「Yuri」

      2位 243,000pt 「Clive」

         ・

         ・

         ・



 文句の「く」の字すら言わせず、完膚なきまでに、ぶっちぎりの1位を突っ走っていた。



 隔月で行われるランキング戦は今月で第13回である。そして各ランキング戦の1位だったプレイヤーは


 第1回 Granvelle

 第2回 Yuri

 第3回 Yuri

 第4回 Yuri

 第5回 Yuri

 第6回 Yuri

 第7回 Yuri

 第8回 Yuri

 第9回 Yuri

 第10回 Yuri

 第11回 Yuri

 第12回 Yuri



 初回こそベテランプレイヤーに押しつぶされてしまったが、第2回以降はYuriが11連覇中である。というのも、由莉は始まって5日くらいで2位以下を最低でも倍__400,000点以上は平気ではなしてしまうのだから誰もがやる気を喪失してしまっている。



「起きたらまた頑張ろう……ね……………………ん?」



 気を抜いた瞬間に溜まっていた疲労が一気に溢れ、そのまま床で意識が微睡まどろんで、いよいよ寝ようとしていたその時、「ピロンっ」とメールが届く音が目を閉じていた由莉の耳に聞こえた。



「ん……誰からだろう……?私のメールアドレス知ってる人なんてあまりいないはずなのに……珍しいな〜」



 眠たい目を擦ってパソコンのメール欄を確認すると一通だけメールが届いていた



(誰からだろう……?メールのさし宛もない……)



 由莉はウイルスメールじゃないかと疑いつつも恐る恐るメールの中身をチェックするとそこにはただ一つ、URLが貼られていた。



「ネットに繋がるリンクじゃない……?直接リンク……だったかな……?」



 そういわれるリンクは注意しろとネットにも書かれていたから由莉は凄く迷った。



(怪しいなぁ……すっごく怪しい。どっかの詐欺サイトとかと繋がったら面倒なことになっちゃうからなぁ……でも……見なきゃいけない気がする。なんでかは分からないけど……うん、開いちゃおう……!)



 覚悟を決め、少し手を震わせながらサイトを開くと次の瞬間、ページ先へと飛ばされるとそこには問題がはられていた。



「狙撃に関する問題……?……ふふっ、少しは楽しめそうかな」



 内容はかなり難解なものだったが由莉は問題を見るなりこれくらいの問題ならと迷うことなく、答え続けていった。



 ___数分後



 簡単すぎるよ……弾道計算?スナイパーの動き?なんだか馬鹿にされてるような気がする……こんなの誰だって分かるよ……?

 もちろん、普通の人なら絶対に分かるわけない知識問題だし、計算問題の式も高校応用レベルの計算だ。それを由莉は凄まじい速度で文字を打ち込み答え続けた。何十問解いたのだろうか……もう分からなかったが由莉はとにかく無心に解きまくっていた。するとある問題を解いた瞬間、再び別のサイトに飛ばされた。そこに書かれていたのは……



(狙撃……?本物の?たしかに興味はある……ない訳がないよ!けど……さすがに冗談だよね……あはは)



 流石に由莉も苦笑いを隠せなかった。何を冗談いってるの?そんなこと出来るわけない、そう思っていた。

 しかし、そのサイトに書かれている事に由莉は段々と引き込まれていった。書いてあることはただ一つ。


「スナイパーになってみませんか?」


 たった一言、それだけなのに……なんでこんなに胸がうずうずするんだろう……。胡散臭いけど……本当に出来るのなら……やりたい。嘘だったらここまで手の込む事なんてしないよね。多分……

 とりあえず返信しよう、そう思った由莉はパソコンのキーに指が触れる直前、身体が謎の反射を起こしピタッと止まった。その指先も少しだけ震えていた。



「……っ!」



 外に出るのが怖かった。怖くて仕方がなかった。もし、お母さんに見つかったら次は……絶対に……





 《《殺される》》





 PCの前でただ俯く事しか出来なかった。どうするのが正しいのか分からなかった。何年もこんな生活をしてきたのに、今さら…………



 けど……行かなくちゃいけない。なんとなくそんな気がする。行かなかったら……きっと私が後悔する。



 不思議な何かに突き動かされた由莉は意を決してそのサイトに返信を送った。すると数分後には返信が届き、2週間後の週末に目的の場所へ来るように言われた。幸い、ランキングイベントが終わった次の日だったから少し安心すると一気に気が抜けそのまま意識は夢の中へと吸い込まれていった。



 ____そして、2週間後



「うんっ、今回もよゆーの1位♪」



 最終結果

 1位 Yuri 2,410,400pt

 2位 Clive 1,044,900pt

 ・

 ・

 ・



 由莉は誰一人寄せ付けることなく圧倒的な差で1位となり12連覇。

 これはサービス終了まで、この優勝回数は誰一人破ることは叶わず、当然連覇記録も当然破られることなく、伝説のプレイヤーの名を欲しいままにしたというのは何年もあとの話である。



「うん、これでもう満足だよ……さて、準備しなくちゃ」


 ______________



 そして、次の日。由莉は自分の服や電子マネーなど必要最低限のものだけ持って扉の前に立った。なんとか自分の赤いリュックと肩にかけるポシェットの中に収めることが出来たがパソコンやゲームのパッケージを入れることは叶わなかった。

 もう、ここには戻ってこれないかもしれない……あのゲームともお別れ……かな。2年もプレイしたんだから別れるのは……辛いよ。……けど、不思議と後悔はないんだよね。あの子とはまた絶対会える、そんな気がする。



 由莉はドアノブをゆっくりと回し、数年来の陽の光を浴びた。あまりの眩しさに、うっ……と手で目の上をかざす。眩しい……なんか肌もジリジリする……まだ、4月だからそんな季節じゃないと思ってたのに……

 しばらくして、目も慣れてくると部屋の外へと出るとガチャッと扉が閉まる音がした。


 そこで由莉は自分の住んでいた所がアパートみたいな所の1階だったことを初めて知った。少しボロくて……ほかの部屋の窓は蜘蛛の巣とか埃を被っているし……私以外誰も住んでいなさそう……。



 そのアパートの隅っこに刺さっている茶黒く錆び付いたスコップも少し気掛かりだったが由莉にはそれ以上気にする余裕がなかった。




 よし、行こう____今度は見つかりませんように……そう願いながら由莉は逃げるように背中に担いだリュックと肩にかけてあるポシェットを揺らしながら日中を駆けていった。

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