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由莉ともう一人の由莉 -カコ-

本日2話目の更新です

__________________


「あなたは……誰……なの?」



にわかには信じ難い光景だった。だが、茶色の綺麗な髪、琥珀色の瞳、小柄な身体、間違いなく由莉の容姿だった。



〈見ての通り私はあなただよ〉



「あなたは私で……私は……あなた?うぅ……もう訳が分からないよ……っ」



ますます混乱し、頭を抱える由莉を見てもう一人の由莉は少し笑うと由莉との距離を一歩詰めた。



〈ねぇ、あなたはなんでマスターの所に来たの?〉



「っ!」



その言葉を聞いた瞬間に確信した。この子は……間違いなく自分だ、自分の心なんだ、と



これは___自分との対話なんだ



「それは……スナイパーになるため。お母さんを……」



〈本当になれるの?お母さんを殺せるの?〉



「……なりたいし……殺したいよ」



〈うさぎ一匹殺すのも躊躇うあなたが人を殺せるの?〉



なんなの……



「それは……っ」



〈中途半端な覚悟じゃ何も出来ないよ?〉



なんなの……なんなの?



「覚悟は……してるよ。じゃなきゃこんな……」



〈……自分の前でも嘘をつくんだ?〉



なんなの……なんなの?なんなの!?



「っ、あなたは……一体なんなの!?」



由莉が激昴している一方、もう一人の由莉はとても冷静だった。自分を見定めるかのようにその姿をマジマジと見ていた。



〈私はあなただよ。私はあなたの事を全て知っているんだよ?今、あなたが本当の事を言われて強がって否定したがっているのもね〉



「やめて……やめてよ……っ」



耳を塞いで情報を遮断しようとする由莉。だが、そんなの無駄と言わんばかりにもう一人の由莉の声が聞こえてきた。



〈そうやって、また逃げるんだ。……でも……仕方ない……か〉



「えっ……?」



また……?またって何?



「私は……逃げてなんかない……逃げてなんか……」



〈それじゃあ、見てみる?あなたの記憶を__〉



そう言ったもう一人の由莉は側まで寄って由莉に手をかざす。すると……またあの光景が頭の中に流れ込んできた。





 ___おびただしい量の血



 ___目の前に倒れている少女



 ___そばで一人怯えている……小さい頃の自分









___少女の血に濡れた銀色の包丁



___『ゆーちゃん……あなたは……生きて……ね』



___嫌だ……死なないでよ……1人にしないで……



___『ゆー……ちゃ……ん……』



___……?ねぇ、起きて……起きてよ……いや……いやぁ……いやあああぁぁぁァァァーーー!!!





「かはっ……!?はぁ、はぁ、はぁっ……!なに……これ……」



間違いない……私をあそこから助け出してくれたあの子の声だ……。でも、あの子は……死んだ……?昔の私の目の前で?思い出せない……思い出したくても思い出せない……っ!

夢の中なのに、汗が吹き出すような感覚がまとわりつくし呼吸のペースもなんだかおかしい……っ。

地面に四つん這いになって苦しんでいる由莉をもう1人の由莉は少し哀しそうにしながら眺めていた。



〈ほらね、私自身の記憶から今もずっと逃げてるんだよ、あなたは〉



「……分からないよ……そんな事言われても……」



〈……そっか〉



もう一人の由莉はそれ以上話を掘り下げようとはして来なかった。



「…………」



〈…………〉



二人の間には少しの間、沈黙が貫いた。

それを破ったのは……もう一人の由莉だった。








〈……あなたってさ、お母さんを殺したいよね?〉







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