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由莉は何も分からなくなりました

 部屋に着くと由莉は一直線にベットへ向かいそのまま倒れ込むと、仰向けになり引き金を引いた自分

の右手を天井にかざして眺めた。



(……やるって決めてた……なのに……あの時だけは……撃ち殺す時だけは……怖かった……っ)



 両手で目を覆いながら指で髪をかきあげる。由莉の心の中では色んな感情がぐっちゃぐちゃにかき混ぜられているのがはっきり分かった。



 マスターの期待を裏切ったことへの悲壮感

 殺すことへの忌避感

 マスターの気持ちが分からなかった悔しさ

 そして___一度でもマスターの事を疑ったこと



 由莉は後悔してもしきれなかった。今この場にあの子があったらそれで自分の頭を吹き飛ばしてしまいそうだ。



(どうしよう……マスターに嫌われちゃったら……もう……耐えられないよ……)



 想像を絶する恐怖だった。誰も自分の事を見てくれていなかった中、唯一見てくれた人達……マスターや阿久津さんが離れていっちゃうんじゃないかと。大切な人をまた失うんじゃないかと……。

 その小さな身体にはあまりにも大きすぎる重圧に潰されそうになりながら由莉はただ丸まって怯えることしか出来なかった。



(……うっ!?)



 唐突に胃の奥からこみ上げてくるものがあり直感的にまずいと由莉は急いでトイレにかけ込むと胃の中のもの全部ぶちまける勢いで吐いた。



「はぁ……はぁ…………っ。分からない……分からないよ……っ!」



心がもう壊れる寸前だった由莉は残った理性で何とか最悪の事態だけは防ぎ、水道で口をゆすいだ。少しだけ気分が落ち着いた由莉はベッドに横になった。



(明日……マスターになんて言えばいいのかな……?私は……_____)



考えようとした由莉だったが、その前に夢の世界に___《《堕ちた》》のであった。

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