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 これはボク───升谷天音が7歳の時だった。


 ───────────────────



「パパ! ママ! あそんで〜!」


「っと、天音、ちょっと待ってな? もう少ししたら遊んでやるからな?」


「天ちゃん待っててね〜?」


「むぅ〜〜」


 わたしのパパとママは……いつもいそがしそうにしてます。

 少しさびしかったけど……それでもそれがおわればたくさんあそんでくれました。


「パパ……ママ…………またおしごと?」


「あぁ、また叔父さんに頼むからいい子にしてるんだぞ? 帰ってきたら、美味しいものたっくさん食べさせてやるからな! 天音の大好きなカレーとか!」


「ほんと!? やった〜っ!」


 パパのカレーはとてもおいしいです!ほんのちょっとからいけど、パパのぬくもりが込められてる気がします。

 ママはあまりごはんを作るのはとくいじゃなかったみたいだけど、パパとママの作るものはなんでもおいしいです!


「2週間くらい開けるけど、天ちゃんいい子にしててね?」


「うんっ!」


 会えなくなるのはさびしかったけど、またかえってくると言うパパとママの言葉をきいてわたしもあんしんしました。


 つぎのひ、わたしはおじさんの所にいくまでにくるまの中でねてしまって、おきたらおじさんの家のベットにいました。

 おじさんに聞いたら、ここについてもぐっすりねてしまっていたから、そのままはこんできたっていわれました。



 …………『行ってらっしゃい』、その言葉が言えませんでした。



 ───それを後悔しない日はなかった────



 そのつぎのひ─────とつぜん、おじさんに髪をひっぱられて地下につれてこられました。

 こわい……そのかんかくだけが……あたまに残ってました。

 あばれても……むだでした。


「ぃゃ……っ、やめ…………てっ」


 髪の毛をつかまれうごけないわたしはなんども……おなかをなぐられたり、けられたりしました。

 いきができなくなって……おなかの中から何かがこみ上げてきました。


「おえっ………ぐ……うっ………おえぇぇ……っ」


 ぜんぶはくと……それはきのう食べたカレーでした。ちゃいろくて……くさいし、口がすっぱくて……きもちわるい……っ。


 なんで……こんなことをするの? おじさん、やさしかったのに…………


「ぅ……うぅ……」


 なんとかおじさんを見ると……そこにはもういままでのおじさんはいませんでした。

目がぎらぎらしていて、わたしがいたがっているのを───わらってみていました。


 はきおわると、またたくさんけられました。


「かはっ!? う、うぇ……っ」


 いのなかが空っぽになって……こんどはきいろいものが出てきました。

 口が……いたくて焼けそうです。


 なんどもなぐられたり、けられたりするうちに……こんどはみどりのものが出てきて……さいごは赤くなりました。

 いたくて…………こわくて……おしりのぶぶんがあたたかくて……じめっとして…………っ。


「パパ…………ママ…………っ」


 なんとか出せた声はわたしのいちばんたいせつなものでした。パパとママなら……きっと助けてくれると─────。

 それをきいたおじさんは、なぐるのをやめると、かべにわたしのあたまをおもいっきり叩きつけました。


「きゃう!?」


 あたまが……ミシって音がして…………へんなこえが出ました。

 めのまえがまっかになって……いしきがなくなりかけていました。


 そんなわたしをなめまわすような目でおじさんは見ると、よく分からないことをしゃべりました。


「お前のパパとママ? あぁ、あいつらなら死んだってよ! あのクソどもやっとくたばった、はははははっ!」


 パパとママが……しんだ? どういうこと……?

 考えるまもなく、あたまをなんどもかべに叩きつけられ……わたしはめのまえがまっくらになりました。





 ───パ、パ…………マ……マ…………っ





 おきたときには、手と足をくさりでつながれていました。……もう体中がいたくて……でも、泣くことができませんでした。

 そんなよゆうなんて……なかった。パパとママが……死んだ。そのいみが……わからなかった。


 ──────────────────


 もうなんにちたったのか、わかりません……からだはもうあざで青とか、むらさきとか赤とか……もう以前のひふの色がほとんどありません。

 ながいものでたたかれたり、あつい水をかけられたり…………まいにちのように気をうしないました。


 そのころには、さけぶことも、わめくこともしませんでした。できるだけ……いたいことをされないように…………。


そうすれば、はやくおわる。


はやくおわれば、たくさんねられる。




はやく…………ねたい。




 ────さらになんにちかたった時、もういたみをかんじなくなりました。

 からだがおかしくなったのかもしれません。

 どれだけなぐられても……口から出るのは真っ赤な血だけでした。


 しなないようにと、まいにち、みずとカリカリのなにかをあたえられました。たぶん……ねこが食べるやつだとおもいます。


 なぐられて、ぐらぐらになった歯が……もうなん本、ごはんのときに、おれたか分かりません。まえのほうの歯はほとんどおれていたので、少しみずでぐちゃぐちゃにして食べます。



 ねちゃり、ねちゃり………


 そんなおとと共に、きもちわるい味が口の中にひろがりました。なんとも……いえません。においだけではきたくなります。

…………でも……たべたいといけないので、がんばって、くちを手でおさえて、のみこみました。






 ────なんで……いきたいのだろう。




 いきているりゆうがわかりません。




 パパとママも……こないです。




 たべても……おなかがいっぱいになんてなりません。




 ……さび…………しい……っ、




「おなかすいたよ……パパ……ママ……どこいったの? また……あったかいごはん食べたいよぉ……」




 たべても……苦しいだけです。

 それでも食べました……しにたくない、一心で。




 くちゃくちゃ……くちゃくちゃ…………

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