ヴァンダム号クルーの合流。
「宇宙港に私達の降下艇があるので、それで惑星軌道上の船に帰りましょう」
「まだ残ってればね。どっちも」
「この星になじみのない俺がいうのもどうかと思うけど、敵がどういうつもりかわからないし、ここにいてもどうしようもない。とにかく行こう」
――移動しようとした矢先、ドームの入口から四人の人影が侵入しようとしていた。お揃いのスーツ、いや制服のような服を纏い、腰には銃のようなものと剣をつるしていることから、どこかの軍人なんだろうということは予想がついた。先頭は初老のおっさん、そして後ろには二十代半ばから後半といったところの三人が立っていた。みんな怪我はないものの疲れ切っている様子だった。
「おぉ! 君たち無事でよかった。これで全員か?」
「よかった! マナラス軍が来てくれたんだ!」
彼らの姿をみて一番安心したのはユージンだった。確かに取引先でもあり、自分の国を守ってくれている人たちだ。こんな状況の中で出会えてたなら一番頼りになる人たちだ。俺は敵の兵ではないという確信を得られて安堵した。
「他の人たちは宇宙港に向かって脱出しようとしてます」
「君らは?」
「ここにいた人たちを逃がして、これから宇宙港へ向かうところです。あなた方は?」
「俺らは……その、前線を突破した敵をだな、追いかけてきたんだが……」
「私たちの艦は墜落して、脱出してきたのよ……」
後ろにいた唯一の女性がしどろもどろになるおっさんの後を引き継いで説明した。
「そ、そういうことなんだ。まあ、そうだ、とりあえず自己紹介しよう。俺はジュラ。機関士だ。こちらの金髪ロングの美女がサラ=マクレガー中尉。索敵士なんだが、機嫌によって態度が悪いからな、気をつけろよ。で、こっちのが砲術士マイケル=サットン大尉。真面目な大尉殿なんだが、おっちょこちょいなんだよな。で、こっちの寡黙そうなのがポール=テンパリー中尉、操舵士だ。ちなみに俺は少尉だ」
にこやかにジュラが説明しているが、サラに睨まれていることに気づいていない。だが、こういう気さくな人がいる軍というのは楽しそうだ。思ったよりもガチガチではないようだ。それは頼りになるのかの話と別の問題だが。
「ジュラ、サラが睨んでるよ。……さて、俺はマイケル。我々は前線を突破した敵艦を追いかけてここまで来ました。その攻撃を受けてしまったみなさんには申し訳ない。我々では力が及ばず墜落、その直前に脱出艇で脱出してこの星に降りました。ちなみにこのメンバーはブリッジクルーで、他のメンバーを探しているところです。みんな無事だといいのですが、みかけてはいないですよね」
「みかけてないですね。そちらの状況はわかりました。ではこっちの状況を説明します。ルーク、頼んだ」
「え? ……はい、私はまあ、宇宙の迷子みたいな感じです。で、さっきから話してるのが友人のユージン=コナー」
「え、あのユージン=コナー!? どうもお世話になってます!」
ジュラは興味津々の様子であったが、周りを見てそこで自制したようだ。
「恐らく、彼はそのユージンです。そして、こちらが大賢者エドガーの弟子、ファン」
「え、それじゃお前さんがファン=キムラ!? マジで!?」
やっぱりジュラは興味津々の様子であったが、周りをみて自制したようだ。
「ちなみに師は亡くなりました。今、その力はルークが継承してます」
「え!!!」
ファンが何かの感情を抑えながらそう補足すると、軍の全員が驚きを隠せないようだった。ともかく説明をやめるわけにはいかない。
「事実としてはそうです。そして、アデヴィスの四将軍がこの星にいます。今もいるかわかりませんが、その四人にエドガーは倒された、ということです」
「師は、最後まで、我々のために戦いました。不意打ちを食らってなければ……そして、泥酔してなければ、こんなことにはならなかったはずなのに」
……泥酔してたのか。全員が驚いたが、声に出せる者はいなかった。
「なるほど、四将軍が。それならあの敵艦の強さも納得できます。実力はわかりませんが、あの大賢者が敗れたのであれば相当の力を持つのでしょう。まだこの星にいることを想定して最悪の状況での対応策を考えましょう」
マイケルの提案である。おっちょこちょいと評価されていたが、やはりまじめな口調からは安心感がある。
「で、どうすんの」
サラはぶっきらぼうに言う。
「我々は艦隊勤務なので宇宙に出るのが最善です」
マイケルがきっぱりと答える。
「船は? 何で戦うの? そこまで考えてるの?」
サラが詰め寄って追求する。
「いやー、そこはほら、同盟艦隊もここに追加戦力を投入するだろうし、そこに回収してもらえばいいと思うんだよ」
マイケルは自信なさげになってきた。確かにこの状況で何かを判断して、意見を言うのはなかなか難しいことのように思えた。俺は何を言ったらいいのかさっぱりわからなくない。
「提案ですが、宇宙港の隣にある記念館にあるスキュータム号を使いましょう」
ユージンが今閃いたような顔をしながら続けて言う。
「旧式ですが我が軍の”飛べない船は船ではない”の精神で、整備は続けられているはずです。百年前の大戦で旗艦であった英雄的な艦ですし、その辺の艦と比べても劣らないのでは。そうでしょう?」
「俺たちで、あの艦を? 光栄なことだ。やろう!」
ジュラが身を乗り出す。まるで青年のようにはしゃごうとしているのを何かの力によって抑えられているように思えた。
「なるほど、この星にスキュータム号が。では我々は他の脱出したクルーを探してスキュータム号に向かいます」
サラが淡々と喋る。
「じゃあ、俺たちも一緒に行こう」
俺はユージンとファンに向けて言った。
「行きましょう。他に手はないでしょうしね」
ファンが言い、ユージンは頷いた。