おもい
目を開ける。
カバーが外れむき出しになった電灯が目を覚ました自分を迎える。
おぼろげながら夢の残骸が頭に散らばっている。なんともまあ、面白みもなく、なんの感傷にも浸れない夢だ。
せめて美人な女でも出てくれればいいのに、夢ぐらい楽しいものを見たいものだ。
小学生の頃や中学の頃の夢を見ることがあった。大学に入学して間もない、引きこもりはじめ、後悔の念が積り始めていた頃だ。戻れるなら戻りたい、なんでこんな事になってしまったのかと、寝る前にはいつも考えた。夢に出るほどに。
今ではそんな夢も見ることはなくなった。大学入学してから4年目の春、後悔し過去を懐かしむ事すらしようとしなくっている。何の焦りもない。授業に出ず無為に過ごすことへの罪悪感すら薄れ消え去っていった。
枕元に置いてあるスマートフォンを手に取る。友達からのメール確認するためではないし、巷で流行りのSNSを見るというわけでもない。ここ数年友達と連絡を取り合うようなことはなかった。
ニュースサイトの記事を流しながら目を通す。別に政治にも国内事情にも興味はないが、ルーチンワークみたいなものかな。相も変わらず事件は絶えないし、政治家は不祥事を起こす。スポーツ選手は代わり映えのないコメントを残している。はたから見れば何も変わらない。人の名前が違うだけだ。
一通り目を通し終え、体を起こす。ふと夢の内容が頭に浮かんだ。もう夢の記憶は大分消えかけていたし、そもそも大して意味のあるようなものでもなかった。それでも…。何か胸にこみ上げてくる感情があった。それは覚えている。
起きて食べて寝る。家にこもっていれば辛いことも起きないし傷つくこともない。出来るなら、一生このままでもいいと俺は思う。何も起きず、何も変わらない。それでいいと思う。だけど、そんな生活をいつか辞めなきゃいけない日が来ることもわかっている。
このままでいいのか?変わらなくていいのか?と自問自答。そうすると胸は鼓動を早め、体は鉛のように重くなる。辛い。
また今度考えよう。来るべき日が来れば考えざる得ない、動かざる得ない。そうなれば俺も出来るだろ。
意味のないことに時間を費やし、考えなきゃいけないことは後回し。
大丈夫だよな俺はまだ?