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「オトシモノ」  作者: 葉月 晶
六日目
41/46

孤独な夜

 それでも半分意地になって長い時間、夜景を眺めていた。何だか淋しくなってきてしまいカーテンを閉めてから大きなため息をつく。


 なんでだろう? 私は亜由美達と一緒に騒ぐのも好きだけどひとりの時間も大切だ。ひとりでゆっくりと好きな本を読みふける。そんな時間も私には必要なのに……。


 前は自分の部屋で本を読んでいてもお父さんの見るテレビの音が聞こえてきたりすると、もう、うるさいなぁなんて思っていた。だけど本当は家の中に家族がいるから安心してひとりの時間を楽しめたんだ……。


 今頃、先輩は何をしているのかな? 自然と先輩のことを思い出す。

 先輩はお父さんと一緒に過ごせていいな……。一瞬だけそんなことを考えたけど本当は違った。


 先輩は高校一年の時にお母さんを亡くしてから、ほぼひとりで暮らしている。私が居候をする前まではひとりの夜を過ごしていたはず。

 先輩も今の私と同じように孤独な夜を過ごしていたのかな。

 淋しくて何も手につかなくなる、そんな夜を過ごした日もあったのかな……。


 少しだけカーテンを開いて再び夜景を見つめる。この光の数だけ人は色々な夜を過ごしているんだ。


 先輩に淋しいってメールをしようと思ってスマートフォンを手にする。だけどそんなメールをしたら先輩は心配して今度こそ本当にコンビニのスィーツを片手に来てくれるかもしれない。


 ダメダメ……。先輩と先輩のお父さんの久しぶりの時間を私のわがままで壊してはいけない。


 そっとカーテンを閉めてベッドに戻る。そしてスマートフォンのメモ機能に今まであったことを書き始めた。


 きっと忘れない。


 元の世界に戻っても先輩の優しさを忘れない。でも記しておこう。いつか先輩とふたりで読んで笑える日がくるかもしれないから。

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