表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「オトシモノ」  作者: 葉月 晶
五日目
34/46

テンションはMAX

 ファミレスの帰り道に先輩が言った。

「電話機能を確認のために俺のスマートフォンに電話をかけてみて」

「了解です」

 スマートフォンを取りだし交換したばかりの番号の電話マークをタップする。耳にあてると呼び出し音が聞こえる。それと同時に先輩が手にしているスマートフォンの着信音が鳴った。

 

 先輩がゆっくりと通話をタップしてスマートフォンを耳にあてる。

「もしもし先輩聞こえますか?」

 少し声がかすれてしまった。自分の声より鼓動の音の方が耳に響いて聞こえてくる。

「聞こえる!」

 先輩の珍しく興奮した大きな声がスマートフォンからも聞こえてきた。

 先輩と顔を見合わせる、その瞬間ふたりのテンションはMAXだった!


 マンションの部屋に着くと亜由美宛のメールを作成することにした。いつもだったら数分で作成できるメールも緊張してなかなか本文が決まらない。色々考えたけれど最終的に簡単な文章を送ることにした。


 件名『元気にしてる?』本文『今から電話していい?』そして送信!

 しかし送信をタップした途端に圏外になってしまい『送信できませんでした』の文字が虚しく画面に浮かぶ。続けて送信をタップしても必ず圏外になりメールは送信出来ない。無言で先輩にスマートフォンを見せる。


「もしかして電話なら……」震える手でアドレス帳をタップする。

「やめよう」

「だって先輩!」先輩のせいじゃないのに睨みつけるような視線を向けてしまった。

「もしスマートフォンが壊れてしまったら?」先輩は静かな声で言った後に私の顔をじっと見つめている。


 私は何も言えずに下を向いた。あとからあとから涙が溢れだす。

「お父さん、お母さんに会いたい。亜由美にも会いたいよぉ……」

 私が泣き止むまで先輩は何も言わずに背中を優しくさすってくれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ