廃墟に到着
先輩の車で病院の廃墟にたどり着いた。まだ廃業して数年だけあり建物自体は崩れている様子はなかった。だけど地元の暴走族やマナーの悪い若者達がガラスを割ったりカラースプレーで落書きしたあとが寒々しい。
病院は山の上にあり沈み行く夕陽が空をオレンジ色に染めていた。
「先輩、逢魔が時ですね」
「すっかりキミも立派なオカ研部員だな」と私の肩をポンポンと軽く叩いた。
今日は2人とも懐中電灯を持っている。先輩が病院の入口を照らすと、入口のガラスも全部割られていて独特の廃墟感が漂っていた。
「行こうか」と先輩が手をさしだす。
「はい」さしだされた手を軽く握る。先輩の手は暖かい。その暖かさが私に勇気をくれた。
ガラスの割れた入口は鍵まで壊されていた。入口から入ってすぐの場所には受付らしきカウンターがあり、カウンターの前にはたくさんのソファが並んでいる。
病院の中は割られたガラスの破片が散らばっていたけれども落書きはなかった。しかし床の上にはペットボトルや空き缶、スナック菓子のゴミが散乱していた。
カウンターの隣には診察室のプレート傾いた状態でぶら下がっているドアがある。恐る恐る開いてみるとデスクにガラス扉のついた棚、そして診察台があった。診察室のガラスも割られていて隙間から「ヒュー」と風が吹き込んでくる音が聞こえた。思わず先輩の手を強く握りしめる。先輩も握り返してくれた。
診察室を出て廊下を歩いて行く。
幾つかドアがあったけどプレートが外れていてわからない、たぶん診察室や事務室なのかな?
つきあたりまで歩いて行くと左側には階段があり下り階段と上り階段があった。下り階段の前には立ち入り禁止の看板がありプラスチックのチェーンが張り巡らされていた。




