俺の方がずっと子供だった
「キミの言う通りだ」先輩は大きく頷いている。
「怖いのは大切かもしれませんが、心霊スポットじゃなくても暗い廃墟の探検するだけでも充分怖いと思うんです」私は少しだけ自信を持って語った。
「俺はキミのことを、ずーっとただの怖がりだと思っていた。だけど心霊写真や心霊スポットにこだわっていた俺の方がずっと子供だったんだなぁ……」と先輩は照れたように頭をかいている。
「そんなことないです!」私は思わず大きい声を出してしまった。
「でもキミが怖がればいいなら、お化け屋敷を十回入るでもいいんだよな?」
「え、えっとそれは……」自分でも顔が引きつるのがわかる。
先輩はニヤリと笑いながら「怖いからイヤか?」
「はい……」とうつむく。
先輩が何も言わないので顔を上げると、先輩は見たこともないような優しい眼差しで私を見つめていた。
一瞬にして頬が熱くなり鼓動が早くなる……。
そんな気持ちを紛らわせるために気がつくと「心霊スポットとしてじゃなく廃墟ファンに人気のある廃墟とかないのかなぁ……」と呟いていた。
「あるよ、隣の県だけども。ちょっと待って」と、先輩はスマートフォンを操作し始めた。
「はい、ここだよ」と先輩はスマートフォンを私にさしだした。
私はスマートフォンを受け取り見てみると検索結果ではなく先輩の受信メールだった。メールには病院の名前と地図のアドレスが添付されている。
「友達に廃墟ファンがいて教えてくれたのだが、経営破綻して数年の病院らしい。もう少し寂れてから探検するつもりでメールを保存しておいたんだけど、行ってみるかい?」
「先輩も一緒に行ってくれますか?」恐る恐る先輩の顔を見上げながら聞いてみる。
「もちろん」先輩の瞳は輝いていた。




