覚えていますか?
「話は変わるけど俺以外にもキミのことを覚えているヤツっているのかな?」
「たぶんいないと思います」と私は慎重に答える。
「その根拠は?」先輩の追及は続く。
だいたい、その根拠はって今は授業中ですか!
根拠……。当たり前だけど思いつかない。
「お母さんの時みたいに拒否されたら怖いから知りたくないっていうのが本音です」
「キミのお母さんは特別だろう、家族以外の人達に拒否されることはないと思うよ」先輩は私の不安感をさらりと流すように言った。
「え? 何でですか?」目が乾燥しちゃうんじゃないかと思うくらいに目を見張ってしまった。
「ほとんどの人が知らないはずの生まれてすぐに亡くなった娘の名前を、見たこともない女の子が名のっているんだぞ……」探るように私の顔を見てから続ける「しかもキミの顔はお母さんに似ている、普通は恐怖を感じるだろう? だから無意識に拒否感とか罪悪感を抱くんだ。たぶんキミのお父さんでも同じだろう」
確かにそうだ……。
私が生まれてすぐに亡くなった弟の話を聞いだ時も、お母さんは口が重かった。
何で私は、お母さんの気持ちを理解してあげられなかったんだろう……。
先輩は、パンっと手を叩いた。
「はい、反省会は終わり。俺の同級生の中島を呼んでみよう」
「中島部長ですか?」中島先輩は去年のオカ研の部長だった人だ。
「あぁ、あいつは俺よりSFに詳しかったから、仲間に加わると心強いからな」
確かに中島先輩は自分でSF小説を書いていたくらいに博学な先輩だった。
五十嵐先輩が中島先輩にメールを送って約三十分ほどで中島先輩は私達のいるファミレスに姿を現した。中島先輩が現れるまでは私だけじゃなくて、なんと五十嵐先輩までも緊張していたのだった。
「よっ! 五十嵐、久しぶりだな」中島先輩は軽く手を挙げて見せながら私達のテーブルに近づいてきた。
大学生になった中島先輩の笑顔は全く変わってなかった。五十嵐先輩ほどにはイケメンではないけれど、誰にでも笑顔で話かけてくれる人気の先輩だった。
中島先輩は私に視線を向ける。




