プロローグ 02
「ただいま」玄関のドアを合鍵で開けて玄関で声をかける。
いつもなら聞こえてくるはずのお母さんの声が聞こえない。
「買い物かな?」首を傾げながら自分の部屋へ向かう。
部屋に入ると窓の外はまだ明るい。壁掛け時計を見るとまだ四時過ぎだった。
部屋の中は薄いピンクのカーテンとベッドカバー、白い机と本棚とタンス。薄いピンクと白を基調とした、いかにも女の子の雰囲気の部屋。
亜由美の部屋のようにカントリー風にまとめられた部屋も憧れるけれどもやっぱり自分の部屋が一番のお気に入りだった。
机の上にバッグを置くとバッグのポケットからUSBメモリが転がり落ちた。
「忘れてた」と呟きながら床に転がったUSBメモリを拾う。掌の上のUSBメモリはシルバーの小さいタイプだった。
――中にどんなデータが入っているのだろう……。
ふと魔がさしたようにイケナイ考えが頭をよぎる。でも少しだけなら、明日の放課後にはきちんと届けるから……。
机の上のノートパソコンを立ち上げる、そしてゆっくりとUSBメモリをさしこむ。緊張していたのか無意識に息を止めていたみたいだった。深呼吸をしてからノートパソコンの前に座りバッグを机の横に置く。パソコンのマウスを動かしUSBメモリ内のデータをクリックした。
パソコンのディスプレイ画面に見なれた風景が広がった、規則正しく並ぶ本棚とカウンター。それは図書館の風景だった。
――図書館司書のUSBメモリだったのかな?
画面の隅に同じ高校の制服を着た女の子の後ろ姿が写っている。誰だろう?
そんなことを考えた瞬間、眩暈に襲われた。
そしてゆっくりと目を開けた時、何故か私は図書館の本棚の前に立っていた。