職務質問なんてされません
リビングに向かう。リビングのソファには先輩が座っていて「明日の午前中は買物に行くぞ」と言いだした。
「じゃあ、歯ブラシだけでも買ってもらえますか?」と私はお願いする。
「歯ブラシだけじゃなくて洋服や色々買うものがあるだろう?」先輩は目を丸くしている。
「でも、私はお金を持ってません、食事代だっておごってもらちゃったし……」
「いつ元の世界に戻れるのかわからないのに、制服だけだと色々と不便だろう? 金なら親父のカードで買い物するから大丈夫、それに明日からゴールデンウイークなのに制服で行動するつもりだったのか? 職務質問されたらどうするんだ?」先輩は正論と失礼な言葉を複雑に絡ませて投げかけてくる。
「職務審問なんてされたことないです」そんな反論しか出来ないのが悲しい。
「でもキミは超童顔だからゴールデンウイーク中に制服で行動していたら、田舎の家出した中学生と間違えられる可能性は高い!」先輩は私に指を突きつけかなり失礼なことを断言してるし……。
これ以上議論しても並行線になりそうなので寝ることにした。
「このゲストルームを使ってくれ」先輩はドアの前まで案内してくれる。
「ありがとうございます、先輩おやすみなさい」と告げてゲストルームに入った。
ゲストルームは私の部屋より広かった。私の部屋は六畳なのでここは十畳くらいかな? アイボリーとブラウンで統一された上品な雰囲気。でも壁には先輩の部屋には入りきれなくなったと思われる本棚がたくさん並んでいて、ゲストルームというよりも先輩の書斎という感じだった。
そしてベッドはセミダブルサイズ。
「眠れるはずないよね」と呟きながらも一応ふかふかのベッドに入る。少しは寝ておかないと……。
私はゆっくりと瞳を閉じた。




