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「オトシモノ」  作者: 葉月 晶
一日目
11/46

ブカブカのTシャツとハーフパンツ

 シャワーを浴びてきた先輩の濡れ髪に、ほんの少しだけ見とれてしまった。やっぱり先輩はオカルトの話をしていなければかなりのイケメンだ。


「着替えがないんだよな」っと先輩がクローゼットからTシャツとハーフパンツを出してくれる。先輩のTシャツから香る柔軟剤が家の香りと違い新鮮な感じがして少しだけ胸がドキドキする。


「親父の寝室と書斎以外は自由に使ってくれ」と言いながら先輩は改めて広々としたマンションを案内してくれた。お父さんの寝室、書斎、先輩の部屋、ゲストルーム、そしてかなり広いリビングに全く使われた形跡のないダイニングキッチン、トイレとバスルームそれぞれの位置を頭に叩き込む。


 そしてシャワーを浴びる為に豪華なバスルーム行った。まるで映画で観たホテルのバスルームのように大きくて湯船はジャグジー付らしく形は丸い。バスルーム専用のエアコンも完備されている。そんなバスルームに圧倒された。だけど私はシャワーを浴びながら悲しくて少しだけ泣いた。


 バスタオルもふわふわとしてて泣いたばかりで熱を持った目元に優しかった。素早く身体を拭いて先輩の貸してくれたTシャツとハーフパンツを着てみる。Tシャツもハーフパンツも私にはブカブカでちょっとだけ恥ずかしい。長い髪をドライヤーで丁寧に乾かした後には、泣いて赤くなった目も目立たなくなっていたのでホッとした。無意識に歯を磨こうとしたけれどもちろん歯ブラシまではなかった。明日、歯ブラシだけでもコンビニで買ってもらおうかな……。

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