第1話 目覚め
「ふぁ~~、ん?」
目が覚めたようだ。先ほどの夢は何だったんだろうと思ってしまう。起きあがった拍子に自分の机を見てみれば、机の上には昨日読んだ複数の漫画が置いてあり、そう言えばその漫画の中に出てくる描写や自分が好きなゲームのワンシーンによく似ていたと思った。
ふと小学生の時に、その当時自分がよく見ていたアニメの主人公になって戦った夢を見たことがあったなと思い出したが、あんなごちゃ混ぜと言った感じではなかったんだけどなと少し笑ってしまった。すると、
「お兄ちゃん、まだ寝てるの?もうお母さんが朝ご飯できたって言ってるよ」
と妹に呼ばれた。妹の名前は陽否 深鈴【ようひ みれい】である。俺の1歳年下の年子で容姿端麗だ。母に似て兄の俺から見てもとても美人であり、しかも勉強もできるしスポーツもできる。その高スペックのおかげで当たり前のようにモテている。俺も去年までは一緒の高校に通ってたから見かけたりもした。ただ、問題は比率が8:2で女子のほうが圧倒的に多かったことだと思う。不本意、そう本当に不本意だが、俺たち兄妹はとても中性的な顔をしている。物語などだと男の俺の方が女よりの顔をしているなんてことがあるがそんな事はないのだが、深鈴はその女よりの中性的な顔でスポーツをするものだから男性は近寄りがたく思うのか、とにかく女子、特に後輩にモテていた。同じ学校に通っていた時にラブレターやファンレターのようなものを渡される姿を見たのも少なくない。そんな妹だが俺を大変慕ってくれているので兄妹仲は良好だ。と、『お兄ちゃんまだぁ~』と扉の向こうから聞こえてくる。呼ばれているのに少し考えすぎたかもしれないな、と思いつつとりあえず着替えてリビングに向かった。
リビングに向かうとすでに深鈴と父さんも座っていた。
「おう、おはよう。今日は遅いな神無」
と、父さんが言ってきた。「おはよう」と返しつつ父さんについても簡単に紹介することにする。誰に紹介してるのかは自分でもわからないが…。
父さんの名前は陽否 勇【ようひ いさむ】。まあ美人の母さんにお似合いと言える程度には格好いい顔つきだと思う。眉目秀麗で文武両道だと思う。断言できないのは勉強の部分であるが、少なくとも大学は出ているはずなので馬鹿と言うことはないはずだ。今の時代なら別だが父さんの時代なら受験は割と大変だったはずだし。武の部分は剣道をやっているがその腕は、見に行けば素人でも引き込まれるくらいにはいいのでかなりのモノだ。最も大会にはほぼ出ないし、一度だけ出た大会では準優勝だった。ただ、その大会での父さんは何となく手を抜いてた感じもしたが。まあそんな父さんは勇の名前にある意味にあっている公務員の仕事をしているが、そんな父さんの給料で何故こんな家に住めてるのかは割と昔っからの疑問だ。と、
「神無ちゃんも起きたみたいだし、そろそろ食べましょうか~」
そう言いながら、母さんがキッチンから味噌汁を運んできてくれた。先ほどから続けている家族紹介も母さんを残すのみだ。名前は陽否 霧【ようひ ミスト】である。今流行のきらきらネームの先駆けと言うわけではなく、ただ単にハーフだから霧と言う漢字に英語を当てはめただけらしい。何故父さんを選んだのかわからないくらいの美人で、さぞかしモテたと思うのだが母さん曰わく、両親共に誰かと付き合うようなことがなく初の恋人同士で結婚したと6歳の深鈴に語って聞かせていた。おっとりとした感じのするしゃべり方をする母さんなのだが、滅多にない怒ったときはさすがに怖かったように思う。曖昧になるくらいに怒る回数が少ないのもあるが、母さんは基本的に子供には怒らないし父さんに怒るところを見ることもほぼないからだ。そんな母さんは…、
『何ぼーっとしてるんだ神無。早く食べるぞ』
っと、父さんに軽く怒られてしまった。
「『いただきます』」
と全員で朝ご飯を食べ始める。我が家は妹もダイエット中だから食べないとかはなく家族全員が集まれるなら、どの食事時でも全員そろって食べるのがルールだ。
そう言えば自己紹介をしていなかった。誰にする必要があるのかとも思うがしておく。名前は陽否 神無【ようひ かんな】である。神無と言う名前だがれっきとした男だ。先も述べたが中性的な顔のせいで女性に間違われることもまあ無いこともなく、また名前で呼ばれると、初めて会う人に中々男と思われなかったりするので、何故両親がこの名前をつけたのかは謎だ。成績は中の上から上の下位を行ったり着たり、スポーツはまあできる方と言った感じで妹の低スペック版みたいな感じだが、そこに別に不満はない。妹の努力を見ているからだ。まあ少しだけできるほぼ平凡な俺は大学1年で昨日19歳になった。始まったばかりの大学生活だが、それなりに楽しい大学生生活が始まると思っていたら、予想以上に楽しく、また同等かそれ以上に大変な思いをするとはこのときはまだ思いもしなかった。
もともとあとがきに少しの書き込みを書くのが自分は好きだったと思うのですが、その気持ちも無くなったし作品として色んな意味で見難くなるのでこの書き込み以降活動報告に書こうと思います。軽い解説みたいなものも入るので見るかどうかは自由ですね。第1話の事から早速と言った感じです。