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問題児たちの本領

 少し遅れました。

「うわああああ」

 ラギリ村の入口付近で突如として悲鳴が上がる。


「火事だぁああああっ!」

 入口付近の悲鳴が合図だったかのように村のあちこちで火の手が上がる。


「うおぉおおっ、倒れるぞ!」

 さらにいくつかの建物が音を立てて崩れていく。

 その中にはマツリが閉じ込められている倉庫のような建物も含まれていた。




「やははは、楽しいのですよ」

 目の前で門が絡み付いた植物の【成長】に耐えきれず崩壊していく様子を見ていると笑いが堪えられなかった。

「さすがは元『青き虎』の幹部。なかなかの腕前ですね!これは私も先輩として鼻が高々なのですよ~」

「…………楽勝」

 むむっ、余裕の態度ですね。ですが、ここで負けてはいられません!私にもシィドさんの仲間最古参としての意地と矜持があるのですよ。

 最近、仲間が増えたのはいいですがキャラが濃すぎて私の影が薄くなっている気がするのです。

(……なんとかせねば!)

 

 ヤノンが一人で勝手に追い込まれている間。残された双子は――ヤノンの態度にドン引きしていた。

「……ヤノンさん、それはねえわ」

「ボクもそう思う。さすがに壊れるのを見ながらの高笑いはちょっと…」


「やっはっはっは~」

 しかし、双子の呟きも調子に乗っていた彼女の耳には届かなかった。


 ――ヤノンが高笑いを始める30分ほど前。

 村で上がる煙に赤い煙が混じって上がり始めていた。

「……この暗闇でちゃんと気付くのか?」

 俺は、見つからないように注意を払いながら、村外れでカラシシの粉末を火にかけていた。

 これは、村内に潜入する前に決めていた合図。

 本来は脱出のために騒ぎを起こせという合図だったんだが……。

 急遽変更を余儀なくされた作戦を改めて思い返してみる。


『――というわけで、あの子の母親の救出。それにあの子の錠を外すために行動するわよ!』

 中に入って出てきたキャロルは開口一番そんなことを言い出した。

『いやいやいや!何がどうなってそうなったのかさっぱりわけがわからん!ちゃんと説明しろ』

『…まったく、無能ねぇ。いい?私がやれと言ったら、やればいいのよ!』

 うっわ~シンプル!

『って、そんなんで誤魔化されるかっ!!』

 そもそもお前が入った時点で助けに入ったんじゃないのか?

『――しょうがない。無能なあんたらのために説明してあげましょうかね』

 やれやれと肩を竦め、キャロルは中でどのようなやり取りが行われていたのかを事細かに説明し始めた。


『――なるほど。つまり、村から出ようにも手枷を外さないといけない。だけど、今のまま行けば村長が母親を人質に取る可能性があるから俺たちが母親の救出、お前たちが村長に枷を外させるというわけか』

 その上で、当初の予定通り外にいるヤノン達には騒動を起こしてもらい余計な人員がこちらに来ないようにするというわけか。

『どう?簡単でしょう?』

『…説明されればな』

 簡単な説明だけで済むんだから面倒臭がるんじゃねえよ。

 憤慨した気持ちでムスッとしてしまう。

『拙者はやるでござるよ!』

 まあ、お前はそうだろうな。

 てか俺もやるのは賛成だし。

『じゃあ、あいつらにも協力してもらうか』


 そんなことがあって今もあちこちで煙を上げたりしているわけだが…。

 ちなみに、ムサシの方は使われていない建物を中心に壊していく。これについては村に詳しいムサシにしかできないからな。

(…さて、これだけ騒動を起こしたんだ。そろそろ動きがあってもいいはずなんだが…。おっ、そんなことを考えてる間に来たみたいだな)

 これだけ村中で騒動が起きているのに騒動とは関係ないマツリの監禁場所へと向かう人影が複数。

(……悪いな)

 心の中で合掌しながら、俺は焚火にカラシシの粉末製の煙玉を放り投げた。


 ――ボフッ!

 軽い音を立てた煙玉は見る見るうちに赤い煙を上げていく。

「「「うぎゃああああ!!」」」

 間を置かずに上がった悲鳴。

「ははっ、どうやら酔いは醒めたようだな!」

 おっと、こっちも移動しねえと…。

 煙を見て別の場所にいたムサシが戻ってくる。

 そして、一層大きくなった騒動に気付き、二手に分かれる連中。

(かかった!)

 思惑通りに動く奴らを見ながら、俺はほくそ笑むのだった。




「…およよ?変ですねぇ~、シィドさんたちも騒動を起こしているようなのですが…?」

 騒ぎを起こしたというのに、一向に出てくる気配のないシィドさんたち。それに、村内からも悲鳴が聞こえてくるという現状。

「………一体、どういうことなのです?」

「……ヤノンさん、何か問題でも起きてるんじゃないの?」

「どうします?助けに行きますか?」

「……う~ん」

 困ったのですよ。こういう時に頼られるのは慣れていないのです。

 ここは癪ですが、慣れてそうなピリノンさんに任せましょう!


「ピリ――ってええぇぇええええっ!?」

 無責任に丸投げしようとしていたヤノンが見たのは、まるで重傷を負ったように顔を包帯――に見えるサラシでぐるぐる巻きにしながら寝転がっているピリノンの姿だった。

 しかも耳を澄ませば、微かに寝息が…。


「…………」

「…………」

「………こ、こうなったら!もっと問題を起こすのですよーー!!」


 こうして止める者がいなくなった問題児たち。

 彼女たちは村の周辺をそれはもう盛大に荒らし回るのだが、それはまた別の話。

 この日、フィアードの問題児たちは遠く離れた地でその本領を発揮することとなった。

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