不安な作戦
「…………おい、本当にこれで行くのか?」
「……?もちろんでござるが?」
ムサシから事情を聴きだし、丸々4日ほとんど休憩も取らずに歩き通して俺たちはラギリ村の手前まで来ていた。
……ただ、俺はこのまま突入することに違和感なんてレベルではないほどの疑問を覚えている。
(……なんで、こんな着ぐるみを着てるんだ!?)
そう、俺とムサシ、それにキャロル突入組はなぜかオオアリクイと猿を足して2で割ったような生物の着ぐるみを着ていた。
「…そもそも、これは一体なんだ?」
こんな気味悪い生物の格好をしていたらすぐに不審がられるんじゃないか?
「それはジルバニア公国ではペットとしてよく飼われている動物モブモブでござる」
……モブモブ?
「モブモブは大きな体に似合わず非常に臆病者でござってな、エサを求めてやって来るでござるが貰うとすぐに逃げ出してしまうのでござるよ」
「……そんなの、よく飼えるな」
「いや?エサをやったら逃げるので基本は野生でござるよ」
「それはペットとは言わねえよっ!」
本当にこんなので大丈夫なのか…?
「なぁに、大丈夫でござる。拙者を信用めされい!」
話をした時のあの真摯な態度だったら信用してもよかったが…。
今のお前、変な生き物が親指立ててるようにしか見えないからな?
キャロルに至ってはあいつの美意識に反するのか、着ぐるみの尻尾や耳も一緒に垂れ下がってるからな?
……こんなことなら、俺もヤノン達と一緒に陽動に回ればよかった。
始める前から不安一杯、後悔しっぱなしの救出作戦。
それが始まろうとしていた。
「モブーモブモブッ!」
………シィドです。今、人間としての尊厳を踏み躙られています。
「ったく、しょうがねえな。ほらよ!」
おっさんの食いかしの果物を渡され、嬉しそうにその場を離れる。
そんなことを繰り返し、俺の心のライフゲージは見る見るうちに減耗していく。
「(――ぷっ、ぷぷ…)」
堪えきれない。
吹き出すように笑い始めたキャロルを小突きながら退散するというこの惨めさ。
だが、徐々に近づいて行っているのだろうか?
真相はムサシにしかわからないんだが…。
「(シィド殿、ここから先はより一層注意を払ってくだされ)」
村の中央辺りまでに来たところ、ムサシから声をかけられる。
「(……もうすぐか?)」
「(………拙者が出た時と同じならば、おそらく)」
自信なさげだが、俺は多分大丈夫だろうと思う。
そもそも、ムサシが知っているだけで4人。母親の方に見張りを付けておけば、本物のマツリが逃げ出すことはないだろう。
つまり、見張りの数はそれほど必要ない。
それに……、
村を見渡す限りそこまで殺伐とした雰囲気は感じない。村人の基本的な性質が善人だということだろう。そんな村人たちが進んで村長に協力するとは考えられない。
だったら、秘密を知る人物は少ない方がいいに決まってる。
おそらくこの件に関わっているのは知っている4人、それに多くても一人、二人ってところだろう。
「(見えたでござる)」
小さな高床式の倉庫のような建物が見えてきた。
ご丁寧に窓に鉄格子まで填めてやがるな。
「(キャロル、壊せるか?)」
「(……う~ん、鉄格子ぐらいなら楽勝だけど)」
他に何があるかわからないから断言はできないか。
「(とりあえず周囲を散策してみよう)」
うろうろと外周を回ってみるが、特に何か仕掛けがあるとは思えない。
……なんとか、本人がいるってことを確認できないかな。
「それならば、拙者たち二人の秘密の暗号ならなんとかなるのでは?」
ムサシに聞いてみると、そんなものがあるそうだ。
「ちゅーちゅちゅん!ちゅーちゅちゅん!」
………バカ?
まあ、頭良くないのは知ってたが…。
突如として変な踊りを踊りながら、鳥の囀りを真似するムサシ。見えないのに、踊る必要はあるのか?
『ぴーちゅ、ぴーちゅ、ぴぴっぴちゅー』
相手もまあまあのアホだったか。
「……なんにせよ、一人だけみたいだな」
気を取り直さないと…。
大変なのはここからなんだから。
次の更新は来週になりそうです。




