新たな3歩
囚われの巫女編開幕です。
予定は大幅に変更となったものの、俺たちはジルバニア公国に入っていた。
「……つい先日までいたイスタンジアとは大違いだな」
ジルバニア公国はよく言えば自然が多い。悪く言えば自然しかない。
代表たちの葬儀が終わり、俺たちは当初の予定通りセントルから東部主要都市イスタンジアへと向かった。
『悪いなぁ。本来ならばもう少し送ってやりたいところじゃが…』
そう言ってくれたクノン代表やジェンネさん(バトムスさんは業務が忙しくて来れなかった)などに見送られながらペンタ連合国を後にしたのだった。
「目的地のラギリ村までは結構かかりそうだよな」
今いるのがペンタ連合国との国境を跨いだ辺り。ラギリ村はここから東南方向へ向かった場所か。
「マツリ、途中でどこか村に寄ったりするのか?」
「…………」
「……マツリ?」
反応がないことを訝しみ声をかけてみる。
「…はぇっ、あっ、な、なんでござるか?」
「…いや、途中でどこかに寄るのか?って聞いてんだよ」
セントルでの事件があってからなんか様子が変なんだよな。
何か話があるって言ったきり、話し出そうともしないし。というよりも何か考えているというか躊躇っているという感じがする。
「……できれば、あまり寄りたくはないでござるな」
ほらな。また何か躊躇ってる感じだ。
そもそも自分の拠点に戻るだけ、しかも病気の薬を持って帰るんだからできるだけ早めに帰りたいはずなのに連絡を入れようとはしない。
まるで本当は帰りたくないんじゃないか?そんな風に勘繰ってしまう。
「そのうちに寄らねばならぬかもしれませんが、できるだけ野宿で過ごしていきましょう」
「「「えええぇぇっ!?野宿~~」」」
それにはヤノン、キャロル、ミルルが不満気な声を上げる。
ちなみに、ピリノンは半分寝ていたらしくその声でハッとなってキョロキョロと周囲を見渡しており、ルルミちゃんは苦笑している。
「何で野宿なのよっ。…こんのバカマツリっ!」
「そうですよ!せっかくジルバニア公国に来たのですから、珍しいモノも見たいのですよ~」
「そもそも野宿にする意味がわかんねえっ!」
ペンタ連合国では基本的に贅沢なところに泊まっていたから感覚が冒険者からずれてきてるな。
ここは俺が…
「お前ら、いい加減にしろ。元々マツリの目的に付き合うって条件なんだ。文句があるなら別のルートで行け!」
「……シィド殿」
「…んっ?マツリ、顔が赤くないか?」
なんだかとろんとしてるような気もするし、薄らと赤みがさしてる。
「どこか体調でも悪いんじゃないのか?」
「い、いえいえっ!なんでもございませぬ!」
「……だったらいいけど」
やっぱりどこかおかしいな。
「(シィド、シィドったら!)」
「……んっ?なんだよ、キャロ――」
「シィーーー!」
本当に何なんだ?
「(小声で話しなさい。いいわねっ!」
へいへい。
「(で、なんだよ?)」
「(なんだよって、わかるでしょ?マツリのことよ)」
「(あぁ…)」
大体言いたいことはわかるが…。
「(あの子、イスタンジアを出てから様子が変じゃない?)」
やっぱり気付くかぁ~。
「(普段だったら、ヤノンと一緒になって真っ先に楽をする方を選ぶのに。いくら元々この国から来たからって、わざわざ野宿を選ぶなんて…)」
そっちかい!
いや、そっちもそっちで変ではあるんだけど…。
「(……そういう気分の時もあるんじゃないか?)」
地元だと知り合いに会いたくないって気持ちはわからんでもない。
「(……はぁ。これだから、あんたは…。まあ、いいわ。パーティのリーダーならメンバーの気持ちにも気を配ってあげなさいよ。私が言いたいのはそれだけ)」
そんな話をしていたからか、マツリの態度に気を配っていると時折こちらを窺うようにしている。何か言い出そうとしているように見えんこともない。
…聞くべきか?それとも、話し出すまで待つべきか?
(信じて待つ。それが仲間だよな)
最近、イスタンジアを出てからシィド殿とよく目が合う。
その度に顔が熱くなるのを感じるでござるが…?
やはり聞きたいのでござろうな。
話があると言ったきり、内容を放してはいないのだから。
(だが、いまいち踏ん切りが…)
言わなければならないことはわかってる。このまま一緒に行くのなら知っていないと巻き込むことになる。同じ巻き込むでも知っていれば逃がすことが出来る。
(やはり、言おう!)
「――聞いてほしい話があるでござる」
夜、野宿の準備を整えた頃。
マツリが突然切り出してきた。
「…実は、拙者はマツリではござらん」
「…………」
「…………」
「「「はっ??何言ってんの?」」」
見つめ合ったまま、沈黙した後。俺たちの声は揃った。
おまけ:【断罪】自分の怒りなどで力を解放するスキル。




