閑話:各地で起こる異変
懐かしい人が登場とか書いておいて二人しか出てません。ごめんなさいっ!
「――アルタフィルさん、よろしいですか?」
シィドたちが旅立ち、町一番の問題児ヤノンがいなくなったことで平穏な日々が続いていた。
アルタフィルはもう一人の問題児エッゾ・ファルンともはや日常と化した攻防を終え、執務室に戻って来たところだった。
「…シスター」
このところほぼ毎日会っている人物に、顔を上げて対応する。
お忍びで出かけていたので秘書もいないということでひとまずお茶をと立ち上がる。
しかし、それをシスタートリミアが遮った。
「アルタフィルさん、今はそれどころではありません」
「また何があったのかい?」
彼女の訪問は最近、本当に多い。
年が明けてからもう軽く十数回はこうして会っているのだ。
「ええ、またです」
彼女から告げられた言葉に、ボクは辟易とする。そもそも、彼女がボクのことを名前で呼ぶ時は大抵碌でもないことが起きてる時なんだよね~。
彼女は、無自覚だから教えてないけど…。
「で、今度は何があったの?」
どうか面倒事じゃありませんように。
「のんびりしている場合ではありません!今度のことはあなたにも関係のあることなんですよ」
ボクにも?
(うわぁ~、面倒臭そう…)
面倒事の香りがぷんぷんし、思わず顔を顰めてしまう。
「つい先程のことです。フィアードの結界、その外縁ギリギリにまで魔物が接近していたという情報が寄せられました」
「なんだって!?」
告げられたことのあまりの内容に目を見開いた。
たしかにこれはボクにとっても、いやむしろボクの方が関係深い。
「……シスタートリミア。ボクの魔力はそこまで弱っているかい?」
自分では自覚がないが、もしかしたらもう結界を維持できないほどまで魔力が少なくなってきているのか?そう尋ねる。
土地持ち系統のスキルは常に維持できるわけじゃない。維持している期間が長くなるほど効力を失ってくる。
「いえ、そんなことはありません。そもそもあなたがこの町の町長になってからまだそこまでの年月は経っていないのですから」
神に仕える神職は結界の強度などを計ることが出来る。その彼女の診断に嘘はないだろうとホッと息を吐く。
「……だとしたら、一体?」
最近ではこんな風に問題が多いな。
普通なら群れで生息しない魔物が群れで生息していたり、危機や食糧難でもあるまいに魔物の生息地域が拡大しているという情報もある。
そこにきて今回の結界付近への接近。
魔物は本来、結界を避けようとするもののはずなのに…。
何が起きているというのだろうか?
「このこと、神はなんと?」
「そ、それが……」
神の意向を尋ねてみるが、シスターは言い淀んでしまった。
「…どうしたんだい?」
「じ、じつはっ…」
「なんだって!?神は今回のことも最近の異変についても何もおっしゃっていないのかいっ?」
信じられない!神は一体何をお考えなのだろうか?
「このようなこと、これまで一度たりともありませんでした。それに、各地の教会と連絡を取ったところ、このような異変は各地で起きているそうです」
「それは…問題だね」
「……ええ」
「…………」
「…………」
深刻な話題に重苦しい空気が流れる。
…ああ、シィド君。君がいなくなってからもフィアードは問題だらけだよ。
君の悪運が騒動の原因だなどと、考えていたボクを許してくれなくてもいいから問題を解決してくれないかな?
そんな甘い考えを抱きながら、ボクは遠い地にいる友のことを考えていた。
この時はまさか本当に彼がここフィアードを救うために戻って来くれるなんて考えもしなかったが…。そして、各地を襲う異変はこれからもどんどん深刻化していくことになり、いずれフィアードに壊滅的な被害を及ぼすことになるのだった。




