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異常事態!?

「おおおっ……!」

 目の前に広がるのは月光を浴びて、白銀に輝きを放つ四季味草の群生。

 これこそが求めていた四季味草だ。そう確信できる純白というなの美しき白。まさに混じりっ気なしの最高品質。

「クノン代表!」

「……ああ、これじゃ!これこそが私の探していたモノ!いや、それ以上の品質じゃ!これほどまでに美しい純白の四季味草は見たことがないっ」

 興奮し、目を見張るクノン代表。


「「「………綺麗」」」

 他のメンバーもこの光景に目を奪われている。


「では、早速――」

 採取しようと動き始めたその時、そいつは現れた。


「グギュオエエエエッ!!」


 突如聞こえてきた奇声、その先に現れたのは鳥型の魔物。

 一見すると鶏にしか見えないが、闇夜でもハッキリと確認できる金色の瞳。月光を浴びて明らかになるのはまるでライオンのたてがみのように顔の輪郭に複数生えているトサカは青色をしていた。


「グギュグギュオオオオ!」

 ――ぷりん

 叫び声と共に、産み落とされた卵。それを見た瞬間、俺はこいつに思い至った!

「……こいつは!」

 目の前の魔物が産み落とした卵。それは森に入ってから幾度も目にした卵だった。

 大きさから魔物の卵だろうということ、それに奇妙な光景に手を出すことはしなかったが…。それでも、印象に残っていた。

 見つけた卵は、すべて複数まとめて産み落とされたいた。

 なのに、その卵は一つを残して他はすべて割られていた。

 中身を食べ尽くされた卵。なのに、どこで見ても一つだけは無事という奇妙な光景。それが俺に何やら警鐘を鳴らすかのように記憶に焼き付いていたのだ。


 そして、何故あんな奇妙な状況になっていたか。その答えが明らかになった。

「グアッ!」

 卵を産み落とした魔物はガッと卵に嘴を突っ込んだのだ。

「「「!?」」」

 ありえない光景に目を見張る俺たちを無視し、その魔物はズチュルルルと音を立てて自らが産み落とした卵の中身を飲み干していく。

 そして、最後の一つだけを残した。その有り様はまさに俺たちが森で見つけた光景そのものだった。


「ク、クノン様っ…!あれは一体なんなんですかっ!?」

 悲鳴を上げるようにヒステリックな声を上げて訴えかけるジェンネさん。しかし、クノン代表は彼女の問いに応えようとはしない。

 いや、聞こえてすらいないのかジッと魔物を見つめていた。


 俺たちも動揺していた。目の前でありえない、あってはいけない光景が繰り広げられていたのだから当然と言えば、当然だが…。

 

 この世界、コメディカルティアにおいては一切の同族殺しが禁じられている。それは、人間だけでなく、魔物も同様だ。

 魔物という大雑把な種類ではなく、本当に同種でしか作用しないため、魔物同士が食べることはある。しかし、今の光景は違う。あれはどう見ても自分が産み落とした卵を食べたのだ。つまりは親が自分の子を食べた。

 それは、起こるはずのない光景なのだ!


「……シィドよ。あの卵を見ておくれ」

 魂の抜けたような声でクノン代表が俺に頼んでくる。

「そうか!」

 その言葉の意味に気付き、俺は【目利き】で卵を見る。

 ジョブ料理人の固有スキル【目利き】。これは食材を見極めることが出来る。食べれるか食べられないか、それに簡単な調理法まで判別できるこのスキル。あれが食材だというのならば俺のスキルでわかるはずなのだ。


 だが、結果は非情なものだ。

「……だ、駄目です。あれは、あれは食材じゃないっ!!」

 気が付けば、目の前の現実を否定するように叫んでいた。

 ――ザザッ!

 俺の言葉で全員が臨戦態勢に入る。

 武器を持つ手は震え、眼は得体のしれないモノを前にした恐怖で揺れ動いていた。


「……ジェンネ、お主はすぐに逃げられるようにしておけ」

 クノン代表は唯一、非戦闘系であるジェンネさんに声をかける。

 ジェンネさんも悔しそうにしながらも、自分では力不足だということがわかっているのか素直に頷き、後ろに下がっていく。


「ルルミちゃ――」

「『下がってろ』なんて言わないで下さいよ?」

 俺もミルルとルルミちゃんを下がらせようとしたが、その言葉はルルミちゃんの言葉に遮られてしまう。

「そうだぜ、俺たちだって覚悟はできてる。冒険者なんだからな」

 続くミルルの言葉。二人の表情はたしかに覚悟ありと見て取れる。

 だったら、ここで下がってろと言うのはむしろ無粋か。


(いざとなったら…、俺が守る!)


「……あれがどういう魔物かはわからん。しかし、だからこそここで討ち取らねばならん」

 放っておけばどのような被害が出るかわからない以上、捨て置くことはできない。そう語るクノン代表はまさに大都市を束ねるに相応しい風格と度量を持っていた。


「先手必勝!いくぞっ、私に続けぇ…!!」

 魔物に向かって真っ直ぐ駆けていく背中を追いかけ、俺たちの戦いが始まった。


「ハアアッ!“狐火突き”」

 クノン代表がスキル【狐火】を纏った突き技を繰り出していく。


 ――スキル【狐火】。クノン代表の技とスキルが合わさった力。元々のスキルは派生スキル【同時展開】。これは、【フレア】を複数出すだけだったが、それが九つだったことと、突きに乗せる時にまるで狐のようになったことから九尾の狐…その尻尾の先に灯る火のように見えることから変化したのが【狐火】だった。


 【狐火】を纏った突きは、青い炎がまるで大きな狐のように口を開け、鶏型の魔物を呑み込もうとしていた。

 だが、そんな攻撃をまるで煩わしいとばかりに魔物が空気を吐き出した。

「風の魔法かっ!小賢しい…、私の炎はその程度では消せぬわっ!!」

 吐き出された空気の弾ごと切り伏せようとしたクノン代表だったが、空気の弾が炎に当たった瞬間、突如フッと消えてしまった。

「なにっ…、ぐ、がああっ…!」

 炎が消えたことで明らかに勢いが減衰した攻撃では、空気の弾を防ぎきれず直撃してしまう。

「クノン様っ!?」

 吹き飛ばされ、木に叩き付けられた彼女の下に急ぎジェンネさんが救援に向かう。


「――っうう…!油断した…」

「クノン様っ!大丈夫ですかっ」

「そう、血相を変えるな。美人が台無しじゃぞ?」

「冗談を言っている場合ですか!傷を見せてください。応急処置ぐらいだったら、私でもできます」

 ははっ、可愛い奴め。自分の直属でもないのに、ここまで心配してくれるとは、つくづくバトムスが羨ましいわい。

 だが、今はそんなことをしている場合ではない。

 私は心配するジェンネを押し退け、声を張り上げる。


「気を付けよ!そやつの吐く息には魔力を消失させる効果があるぞ!!」


「「「!?」」」

 そういうことか…!

 どうりでクノン代表の攻撃が消えたわけだ。スキルだって使うのは魔力。つまりは、魔力が切れればスキルは解除される。


「「だったら、私たちの出番ね(です)」」

 いち早く動いたのは、キャロルとルルミちゃんだった。


「魔力を消されようとも、私には意味がないわ!」

 魔力で動いているとはいえ、それは内部。直接触れなければ意味がないと拳を打ち合わせる武闘派メイド。

「強化系の魔法は切れるかもしれませんが、クレアは元々強い子です」

 スキルで隷属させているとはいえ、魔力が切れたからと敵対することはない魔物を操る魔物使い(テイマー)

 たしかに人選的にはこれ以上ない布陣だろう。

 俺は基本的に魔力を纏った【炎刃】での攻撃がメインだし、ヤノンは待ちのタイプで攻めていくのには向いていない。マツリやピリノンは魔力が切れれば使い勝手の悪い能力になり、ミルルも同様。


 …こうなったら、二人に任せるしかないか。


「わかった。二人に任せる!俺とマツリ、ミルルで敵の注意を引きつける。ヤノンとピリノンは俺たちのサポートに回ってくれ!」

「了解です!」

「わかったでござるっ」

「しゃあねえ、やったるか!」

「…………了解」

・前回の捕捉

 フーリガーの対象に人数を挙げましたが、そこにルルミの魔物クレアは含まれていません。あくまでも人数ですから。とはいえ、キャロルもどちらかというと『1体』なんですけどね。

 決してクレアの存在を忘れていたわけではありませんよー。本当ですよー。(汗)

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