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大決闘大会・燃える闘志

 なんとか書けました(汗)。次は本当に月曜日になるかも…。

『さあああっ!本日も開催、西部主要都市ブゲキのメインイベント!代表主催の大・決闘・大・会~~~!!司会は私、ペペロニア・ヒューがお送りしますっ!』

 黄色い声がマイクで拡声され、会場中に鳴り響くとそれに応えるように観客席から歓声が上がる。

『――そして、解説はもちろんこのお方!我らがブゲキ代表アウグスト・バトムス様~~~』

『どうも~』

 実況席から手を振るバトムスさんの姿。

 そして、応えるように…、

「てめえーー、またそんなおいしいポジションにぃぃぃ!!」

「職権乱用だあ~~!」

「くたばれ!このブタ野郎!!」

 男どもの野次や罵倒の嵐が起こり、会場全体をドス黒い気配が包みこむ。


((な、何やらかした(でござるか)!?))


 おかしいだろう!ここまで盛り上がるイベントでなんで解説がこんなにバッシングを浴びてんの?!

 いや…、待てよ!

 よく耳を澄ませば、聞こえてくるのはすべて野太い声ばかり…。このバッシングはすべて男性。そして、その怨嗟の声はバトムスさんに向けられているが、視線は……実況席に向いている。

 そうか!この男たちはあの実況のファンだ!

 つまり、バトムスさんはアイドルの隣に陣取っている男性てき

 

 向こうの世界でもアイドルのファンたちは熱狂的を通り越して、狂信的な信者だ。そんな彼らの前で仲睦まじく(少なくとも彼らの目にはそう映っている)光景を見せては火に油を注ぐ行為。

 だが、そのおかげで会場全体がヒートアップし、いい雰囲気に変わっていく。

(そうか。これがあの人の目的か)

 俺はバトムスさんの底知れなさに会場の温度と反比例し、寒気を帯びていくのを感じていた。


 ふむ、凄い熱気でござるな。

 先程の罵倒が嘘のように会場全体が団結して事に臨もうとしているのを感じるでござるよ。おそらく、このイベントはこの都市にとっては一種の儀式のような神聖さがあるのでござろうな。

 なればこそ、みっともない試合は見せられぬ…!

 それに…。

 チラッと代表への観客の反応を見てからボーっとしているシィド殿を横目で見る。

(この御仁…シィド殿。どこか放っておけないモノを感じるでござる)

 拙者が感じているモノが何なのか?それはわからぬ。だが、何かを感じたからこそシィド殿の同行を許可したのでござる。

 これまで、あの二人以外誰も信用してこなかった拙者が…。


『さあ、ここでいよいよ対戦相手の入場だーーー!』

 実況の声にハッとなり、入場門に目を向ける。

『――まずは期待の新人ウル・ガリウス!』

「ウオオオオオオッ!」

 雄叫びを上げなら現れたのは酒場でバトムスさんを吹き飛ばしたあの男だった。

 実は、バトムスさんに雇われた人間は通過儀礼としてこの大決闘大会に出場するのが決まりらしい。

『そして、ブゲキで知らぬものなし!荒野に咲く一輪の薔薇、その厳しい眼差しに見つめられたい男性ファン続出!本職は代表秘書という異例の肩書きを持つこのお方ジェンネ御姉様~~!』


「「「キャアアアアア~~~~~!御姉様~~~!!」」」

 バトムスさんの時とは打って変わって黄色い歓声が会場を轟っ!と揺れ動かす。

 その歓声に誘われるように颯爽と現れる女性。

「うおっ!凄えな…」

 その女性はマツリよりもさらに際どい服装をしていた。

 マツリは上下別れたビキニアーマーなのに対し、彼女はパンツの紐が肩まで伸びたようなそれは本当に衣装として合っているのかと聞きたくなるような…。

「ななななっ…!」

 マツリはもう故障したようにプルプルと震える指先を彼女に向ける。

 自分のことでもないのに、羞恥心からぷしゅ~と湯気が立ち上る。


「…………」

 彼女は、腰に付けていたマイクを取り出し……、

『皆さん!本日もご来場ありがとうございます!」

 爽やかにマイクパフォーマンスを始めたのだった。


『バトムスがブゲキの代表になってから開催されるようになったこの大会も早いことで今日で1000回目。初めは新人歓迎のためのイベントだったにも関わらず、今ではこれほどまでに大イベントになりました』


『そして、今日の決闘は一味違います。新人歓迎の意味はありますが、今回は挑戦者シィド&マツリペアの心を証明するための神聖な決闘!皆さんにはこの決闘の目撃者となり、真実を証言するという覚悟がおありですか?』

 彼女の問いかけに会場全体から肯定の意志が飛び交う。


『それでは、言葉はこれ以上いりません。始めましょう――!』

 彼女の言葉が試合開始のゴングとなる。




「……始まったのですよ」

 観客席から試合の様子を見守っている私は、手をぎゅっと握りしめる。

「うわっ、強烈~」

 対戦相手の女性の一撃を見ながらそんな声を上げるのは、先日ナイフォワ王国の王都レキシントリアで加入したばかりの双子の片割れ――ミルル君でした。

 彼は、試合の開始直前といよりもシィドさんたちが出てくる直前までですが、自分が戦力外扱いされたことに荒れていたのに衣装を見た途端に出なくてよかったと漏らしていました。子供らしく、非常に素直ないい子なのです。この子がシィドさんのようにならないように気を付けねばっ!

 その横では同じ顔をしたルルミちゃんが祈るように、さらにその奥では興奮した様子で試合マツリさんを凝視しているピリノンさん。


 ――そして、誰よりも興奮して応援しているキャロル。

「そこだー!イケぇええ!やれっ、コラ逃げるなあああ!!」

 あまりにも興奮しすぎて応援と共に腕を振り回している。本来ならば止めるか諌めるかすべきなのでしょうが…。

 しかし、彼女の観客席周辺に広がる惨状を見るとどうしても躊躇してしまう。

 彼女の前には拳の跡が残る瓦礫が散らばっていた。

 彼女が興奮のあまり放った拳が数回当たり、その際落ちてきたものだ。それを見て初めは注意しようとしていた他の観客たちは腫れ物に触れないように遠巻きに見ている。


(……これは見習わないといけませんね)

 仲間のことを必死に応援する姿を見て、私は試合を見ながらエールを送ったのです。

「……頑張るのですよ」




「チッ!」

 俺は対戦相手の力量に厄介を感じて舌打ちを漏らす。

 まず、おっさんことガリウス。こいつはガタイがいいだけあってタフでこちらの攻撃をほとんどノーダメージでやり過ごしている。

(それ以上に厄介なのが…)

「せやああっ!!」

「ぐうっ…!」

 少し離れた場所でマツリがジェンネさんの強烈な蹴りを受け、苦痛の声を上げる。

 そう、このジェンネさん。本業が秘書とは思えないほどの機動力、それに合わせて持ち合わせているしなるような柔らかさと強靭さ。研ぎ澄まされた肉体が放つ一撃は力任せのガリウスとは比べ物にならないほどに強力なモノとなっていた。


「どこを見ている!」

(しまっ――)

 マツリに注意が向いているその隙を突き、ガリウスの豪腕が唸りを上げて俺に向かってくる。

「くぉの…!」

 咄嗟に手を出し、【フレア】を展開しようとしたが、【フレア】は形になる前にぷしゅ~と音を立てて消滅してしまう。

「なっ――!!」

 それに驚いている間にボディーに強烈な一撃を見舞われる。

「ぐおえっ…!?」


『おおっとーー!!これは決まったぁ~~~!ガリウス選手の二回り以上の体格差から放たれる強烈なボディブローがシィド選手を軽々と吹き飛ばしていきましたっ!!』

『……今のは、シィド選手の油断だねぇ~』

『解説のアウグスト代表!それは一体どういうことでしょうか?』

『彼がこの都市(ブゲキ)に来たばかりの旅人であることが災いした、そういうことさ。彼は、普段冒険者をしているらしいからね。ピンチの時にスキルや魔法を使う。それが当たり前になっていた…そう言えば、わかってもらえるかな?』

『なるほど~。つまり、先程シィド選手が一瞬硬直したように見えたのはスキルを発動しようとしていたと?』

『…スキル、あるいは魔法だろうね。何にせよ発動しようとしてこのコロシアムの制限に引っかかった。そういうことだと思うよ?』

『はい、解説ありがとうございました!そして、シィド選手は残念!これは大決闘大会初心者がよく陥る典型的なパターンが嵌ってしまった形になります!

 観客の皆様はご存知でしょうが、大決闘大会においてはいかなるスキル・魔法の類は使用できません!な・ぜ・な・ら……』

 一旦、勿体ぶるように溜める実況のペペロニア・ヒュー。

『そうです!私がいるからです!』

「「「おおおおおっ!」」」

 彼女の宣言に合わせるように会場が湧き上がる。

「さっすが!俺のヒューちゃん!結婚してくれ~!!」

「いやいや、俺と…!」

「儂の愛人という手もあるぞい~」

『はいはい。皆様のご厚意だけは受け取っておきま~す!この会場には私を含め、10名近い楽師が配置されています。彼らが会場の盛り上がりに合わせて私のスキル、【制限】の威力を増大させているので当コロシアム…それも闘技場内部において、参加者は己の肉体以外は何も使えない仕様になっております!」


「…がっ、っつう~!」

 殴られた箇所を抑えながらよろよろと立ち上がる。

(あぁ~、忘れてたぜ)

 スキルなどが使えないとは言われていたが…こういうことか。

 【フレア】を発動しようとして途中で掻き消されるような感じ。あれは事前に知らねえと動揺しちまうな。いや、それは言い訳にしかならないか。

 油断していようとも俺に実力があればこんなことにならなかったはずだ。

 結局は俺の地力の問題だ。

「あ~あ。あんまり乗り気じゃなかったんだけどな……」

 初めはこんな試合乗り気じゃなかったんだ。ハッキリ言って勝たなくてもバトムスさんにわかってもらえればいい、そんな気持ちで試合に臨んでいた。

 ――だけど、

「このままやられっぱなしは性に合わないな…」

 ここまでされて黙ってられるかっつーの!!


「しゃあああっ!やるか!」

 気合を入れ、意気込み新たに今度こそ真剣勝負の舞台に昇るのだった。

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